訴訟告知【不倫裁判】メリットとデメリット 手続の流れを弁護士が説明

離婚・男女問題に取り組む弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。

涙を流している女性の相談者
相談者

不倫をしたということで、妻から裁判所に訴えられました。
私だけ訴えられて、夫は訴えられていません。
「訴訟告知」というものがあると聞きました。
訴訟告知について、教えて欲しいです。

弁護士の水谷真実の写真です

訴訟告知ですね。
不倫の裁判で、よく話にでることです。
少し分かりにくいですよね。ご説明いたします。

訴訟告知とは?

場面

妻が不倫相手の女性を訴えて裁判になる。
妻と不倫相手の女性の間で裁判となる。
そこで、不倫相手の女性が夫に対して訴訟告知をする。

訴訟告知とは、例えば不倫相手の女性が訴えられた場合に、不倫相手の女性が夫に対して、訴訟に参加するよう告知することです。

訴訟告知をすると、夫に裁判に参加する機会が与えられます。

訴訟告知をうけた夫は、女性側に参加することができますし、妻側に参加することもできます。

(訴訟告知)

民事訴訟法第53条 

1当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。

2訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。

3訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。

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訴訟告知の効果

訴訟告知をうけた夫が訴訟に参加しなかった場合

訴訟告知をうけた夫は、裁判に参加しなくても参加したものとみなされます。
そして、裁判の結果に拘束されます。

(訴訟告知)

民事訴訟法第53条   
4訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。

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(補助参加人に対する裁判の効力)
民事訴訟法第46条
補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一 前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
二 前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
三 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
四 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。

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不倫など男女問題の裁判の場合、訴訟告知を受けても夫は訴訟に参加せず中立の立場をとることが多いです。

夫としては、自分自身が原因の裁判には参加したくはありません。
本来なら、裁判にならずに和解で終わって欲しいと思っているはずです。

夫の中には、妻のことも女性のことも大事だからこそ、裁判に参加したくない人もいます。

その後、「判決」となり、例えば女性は妻に対して100万円払えとなったとします。
この場合、判決文では、例えば夫の負担7割、女性の負担3割と負担部分が記載された判決がなされます。

不倫(不貞行為)は、夫と女性の共同不法行為です。
そして、不真正連帯債務といって、判決に基づいて妻は女性に対しても夫に対しても、判決に基づき100万円までを丸々請求できます(妻は女性と夫から合計100万円は超えては支払を受けられません)。

和解する場合

訴訟告知がなされても、判決ではなく和解をする場合があります。

和解の場合は、訴訟告知の効果が夫に生じません。

そこで、和解をする場合は訴訟告知の効果が夫に及ばないことを考慮して和解をすることになります。

弁護士の活用のしどころ

女性としては、訴訟告知の効力が夫に及ばないことから、どういう内容の和解が自分に有利なのか、弁護士に確認しましょう。
妻や夫との関係を考慮して、どういう内容の和解ならば良いのかをアドバイスもらいましょう。

判決後:女性と夫との関係

女性は妻に対して100万円支払えという判決に基づき、女性が妻に100万円を支払ったとします。

女性の負担部分は30万円です。
夫の負担部分は70万円です。

そこで、女性は夫に対して、70万円を請求できます。

事前に裁判で女性が夫に対して訴訟告知をしていれば、夫は裁判の結果に拘束されます。
夫が女性に対して70万円支払わない場合、女性が夫に対して70万円の支払いを求める裁判をした場合、前の裁判で訴訟告知を受けた夫は前の裁判の結果に拘束されます。
後の裁判で、70万円の支払義務がないと主張することができません。

訴訟告知のメリットとデメリット

なかなか難しいところです。

メリット

女性の立場から考える


単純に考えますと、女性は夫に対して訴訟告知をすることで、後日女性が夫と裁判になった場合に有利に訴訟を進めることができることがメリットです。
ただ、感情の問題もあり、そう単純ではありません。

その他には、女性と妻の裁判で女性に有利に働かせられる場合も考えられます。
次のような事案のような場合です。

事案

妻と女性の間における、不倫の慰謝料請求の裁判が行われております。
和解の話となりました。妻は150万、女性は70万円を主張しております。そして、妻も女性も、自分の主張する金額からは譲歩ができないとも主張しております。
そこで、女性は夫に対して訴訟告知をしました。そして、女性は、妻と夫は夫婦なのだから話し合って欲しい、このままだと夫も負担することになると主張しました。
そのため、妻は夫と相談することになり、150万円という主張を撤回しました。

事案

妻は女性に対して、150万円の慰謝料請求をしております。
一方、女性は妻に対して、70万円しか支払わないと主張しております。
妻は夫と結婚しておりますが、別居をしております。
訴訟告知をされた夫は女性に対して、慰謝料のうち80万円を負担するから、女性と和解して欲しいと伝えます。
そこで、女性は妻と和解しました。

妻の立場から考える

夫が逃げている場合、裁判がなされている事実に夫を向き合わせることができます。

妻としては、裁判の場を利用して、夫が女性と今後は不倫させないようにすると良いです。
夫に対して、女性と不倫をしないという誓約書を書いてもらうこと等が考えられます。

デメリット

夫の立場から考える

訴訟告知をすると、夫を訴訟に巻き込むことになります。
夫としては、訴訟に参加したくない人が多いです。

夫は、自分自身が原因の裁判には参加したくはありません。
本来なら、裁判にならずに和解で終わって欲しいと思っているはずです。

夫の中には、妻のことも女性のことも大事だからこそ、裁判に参加したくない人もいます。

また、場合によっては、訴訟告知をすることにより夫が怒る場合もあります。
そして、夫が女性に対して、不満などを述べて関係が悪化する場合もあります。

妻の立場から考える

状況によっては、妻は、何故夫に対して訴訟告知をするのだと憤ることがあります。

そして、妻の女性に対する感情がより悪化する可能性があります。
その結果、訴訟において和解がうまくいかなくなったり、時間がかかることも考えられます。

結論

以上から、訴訟告知のメリットやデメリットは、一概には言えないです。
妻、夫、女性のそれぞれの関係やおかれた立場から、メリットデメリットは変わるものです。

弁護士の活用のしどころ

訴訟告知をするのかしないのか等について、弁護士とよく相談しましょう。
自分の希望を弁護士に伝えて、その希望が妥当かを弁護士にアドバイスしてもらいましょう。

訴訟告知する際の手続

裁判所に訴訟告知する

裁判をしている担当の部に、訴訟告知の申立てをします。

必要な書面としては、

訴訟告知書の書面
 ・裁判所
 ・相手方(原告)
 ・被告知人
に送ります。そのため、3部用意します。

郵便切手
・被告知人用
特別送達で送るので、郵便切手1089円(令和2年10月現在)を用意します。

・相手方(原告)用
普通郵便で送るので、郵便切手84円(令和2年10月現在)を用意します。

被告知人の住所が分かる資料(戸籍の附票など)
被告知人の住所が分かる資料(戸籍の附票など)を準備した場合は、裁判所に提出できます。
原本ではなく、コピーでもかまいません。

最後に

不倫の裁判の場合は、訴訟告知などの手続面を意識しつつ、それぞれの当事者の気持ちを考えながら行うことが大切です。

裁判は負担が大きいですが、慎重に対応すれば必ず解決します。

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この記事を書いた人

弁護士水谷真実

弁護士水谷真実

東京の新宿駅の近くの新大久保で、弁護士事務所開業。弁護士10年目を超えました。離婚事件、一般民事事件、新大久保近辺に住む方々の事件、外国人の事件。ブログは主に離婚や男女問題について書きます。
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