弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。
陳述書の作成について
裁判で、尋問の前に提出する陳述書の作成についてです。
陳述書は、まず、パソコンのWordかテキストファイルで、最初はだいたい3枚~5枚を目安に作成してみます。
書くべきことが沢山あるのであれば、3枚~5枚を超えることはもちろんかまいません。
裁判において、大きな争点があるはずです。
離婚の場合ですと、婚姻関係を継続しがたい重大な事由があるなどです。
慰謝料を請求したい場合は、慰謝料も争点になりますね。
法廷での尋問も、この争点を中心に聞くことになります。
ただし、尋問の時間が限られております。
そこで、尋問では話せない部分について、陳述書で補うという側面があります。
陳述書は、裁判で主張立証してきた書面の内容と重なることが多いです。
そこで、提出した書面の内容を確認しながら作成すると良いです。
作成の方法
裁判所のページに、記載があります。
そして、作成の際は、次のことを意識する必要があります。
時系列に沿って具体的に(いつ,どこで,誰が,何をしたのか)記載してください。
裁判所
作成の際は,あなた自身の言葉で,事件の経緯を説明することを心がけてください。
既に相手が陳述書を提出している場合
既に相手が陳述書を提出している場合、相手の陳述書に対応する形、反論する形で書いても良いでしょう。
弁護士の活用のしどころ
陳述書をとりあえず作成したら、弁護士と打合せをします。
陳述書の最初から順番に読み合わせをして、内容を確認していきます。
修正した方が良い部分や、もっと具体的に示した方がよい部分などを明らかにしてきます。
陳述書の作成・提出の時期
陳述書の提出の時期は、とくに決まってはおりません。
最初に、陳述書を証拠として提出することはあります。
証拠があまりない場合等は、陳述書を証拠として最初の段階で提出することは考えられます。
まだ陳述書を提出する時期ではないと考えていても、裁判官の方から、陳述書の提出をしないのか確認してくることもあります。
この場合には、陳述書を作成して提出しても良いです。もしくは、争点がよりはっきりしてから、争点に絞った陳述書を作成することが考えられます。
尋問を行う場合には、尋問の前に陳述書を作成して提出します。
裁判で原告と被告が主張立証を行い、最終的に争点となっている部分について尋問を行う場合があります。この時に、尋問の前に、尋問を行う人(当事者や証人)の陳述書の提出をします。
もしくは、尋問と関係なく、陳述書を提出する場合もあります。
陳述書は、証拠となります。例えば、婚約について争っている場合、婚約をしていた事実を裏付ける証拠として、友人・知人に陳述書を書いてもらうこともできます。
陳述書の作成で気をつけること
判例を意識することが必要な場合があります。
例えば、親子関係不存在確認の訴えについてです。
判例は、外観説という立場をとります。
すなわち、夫の失踪、在監、外国滞在、夫婦の事実上の離婚など父子関係があることがあり得ないことが外観上明白な場合のみに限定して、親子関係の不存在を認める内容です。
※親子関係不存在確認の訴えの注意点などについては、次のブログに記載をしております。
そのため、陳述書にかかる立場と矛盾する内容、例えば、一緒に同居をしていた時があるなどど記載をすると、判例と矛盾することになります。
弁護士の活用のしどころ
弁護士と相談して、法律や条文、判例との関係で、どのような陳述書を作成するべきか話し合うと良いです。
陳述書のたたき台の作成を他の人が作成しても良い?
具体例1
婚約破棄の裁判で、友人が陳述書を作成してくれるとのことです。
友人は、私に有利な陳述書なんだから、たたき台くらいは私の方で作成しろと述べております。
そういうものなんでしょうか?
陳述書は、陳述する人の経験と認識に基づいている書面です。
第三者に陳述書を作成してもらう場合、その第三者に作成してもらわなくてはなりません。
友人に陳述書を作成していただく際、友人の方の経験と認識に基づいている必要があります。
裁判所提出前に、弁護士は事前に内容の確認はいたします。状況に応じて、友人の方と打合せをして、一緒に作成もいたします。
裁判所のページには、陳述書について次のように記載あります。
陳述書の提出について
「陳述書とは,事件に関してあなたが経験したり認識したりした事実を時系列に沿って述べたものをいい,あなたの言い分を裁判所や相手方が理解し,事件の経緯や問題の所在を把握するために用いられるものです。」
また、次の様にも記載されております。
作成の際は,あなた自身の言葉で,事件の経緯を説明することを心がけてください
裁判所
具体例2
自分で裁判をしております。
90歳のおばあさんの陳述書を裁判で証拠として提出したいんです。
ただ、おばあさんは自分で陳述書を書けないので、私がおばあさんから聞いたことを陳述書にまとめようと思います。
悩んでいるのは,私が文書を整理して構成するので、おばあさんが作成した陳述書にみえないのでは?ということを心配しております。また、おばあさんは90歳ですので、陳述書を作成できるのだろうかと裁判で疑われることも心配です。
弁護士の場合も、本人からお話をお聞きしながら、陳述書の書面を作成することはあります。
この場合は、陳述書の書面内容は、弁護士が作成したような書き方や言い回しになることはありますね。
おばあさんに無断で陳述書を作成することはできません。おばあさんに陳述書の内容を確認の上、陳述書に署名や押印をいただくことになりますね。
90歳の方でも、陳述書をしっかり作成できる方はもちろんいます。90歳の点については,あとは、裁判で、相手が反論をする話ですね。
裁判所に提出した陳述書の内容を修正したい場合
裁判所に陳述書を提出して、証拠として採用されて取調べをうけた後に、陳述書の内容を修正したい場合があります。
具体例
原告が陳述書を提出したあとに、自分の味方として証人となっても良いという人が現れることがあります。
離婚訴訟において、不貞関係を疑われている人が証人となっても良いという場合です。
しかし、証人となるにしても、供述予定の内容が、既に提出した原告の陳述書の内容と齟齬が生じる場合があります。
この場合には、陳述書2として、修正を加えた陳述書をあらたに証拠として提出することが考えられます。
または、訂正書という形で、提出した陳述書について訂正したい部分だけを記載して提出することも考えられます。
その他に、準備書面(主張書面)において、主張をするということも考えられます。
裁判官と直接話して、どうするか検討することも考えられます。
陳述書の作成の流れについて(尋問において)
原告と被告の主張立証が一通り行われ、和解もできないときがあります。
そのため、争点について事実を明らかにするために、尋問を行わなくてはならない場合があります。
尋問の前に、陳述書を作成して証拠として裁判所に提出します。
裁判の期日において、主張や立証が行われます。
原告と被告の主張立証が一通り行われ、和解もできないとなれば、次は尋問となります。
原告と被告の陳述書の作成となります。
その他に、証人予定の人の陳述書の作成も行われます。
陳述書の提出時期や内容が変更することがある
次回の期日で陳述書の提出をとなっても、状況が変わることがあります。
当事者の一方が、新たな証拠が得られたとして、陳述書の提出前に新たな証拠を提出したいと主張してくることがあります。
そして、当事者の一方は他方の当事者に対して、新たな証拠等について、次の期日で回答することを求めてきます。
そのため、陳述書の提出時期や予定していた陳述書の内容が変更することがあります。
裁判所の期日において、証拠申出書が提出され、証拠として陳述書が提出されます。
裁判所で、尋問が行われます。
尋問については、次のブログに記載しております。
尋問をうけない代わりに陳述書を提出する場合
尋問をうけないために、陳述書を提出する場合があります。
例えば、次のような事案の場合です。
裁判で、夫は妻に離婚を求めています。
妻は、夫は他の女性と不倫をしていた、夫は有責配偶者であると主張しています。
そして、妻は、不倫相手とされる女性の証人尋問を求めています。
夫は、不倫相手とされる女性ともめています。そのため、夫は、不倫相手の女性に証人尋問をしてほしくありません。
この場合、夫としては、不倫相手とされる女性の陳述書の提出が考えられます。
ただし、妻側としては、陳述書が提出されても、夫や不倫相手とされる女性に有利な内容ばかりの陳述書であれば、納得しません。
あくまで証人尋問を求めることになるでしょう。
不倫相手とされる女性にとって、あえて自分に不利益な内容の事実を認めた陳述書でなければ、妻側は納得しません。
例えば、〇年□月△日に、一緒にお酒を飲んで、ホテルに宿泊した等の内容が陳述書に記載されている必要があります。
なお、 あえて自分に不利益な内容の事実を認めた陳述書は、判決の際に証拠として用いられます。
裁判所は、 あえて自分に不利益な内容の事実を認めており、内容からしても、十分に信用できると認定する可能性があります。
そこで、夫としては、不倫相手とされる女性と相談して、陳述書を作成する必要があります。
また、弁護士がいる場合は、弁護士と相談する必要もあります。
仮差押えの申立ての場合の陳述書の書き方について
裁判所の次のページに、記載例があります。
記載例に記載しているとおりですが、
・経緯
・相手(債務者)との交渉状況
などについて、自らの体験事実を具体的に記載することが求められます。
参考になるサイト
陳述書の作成は、次のサイトなどが参考になります。