弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。
裁判で、尋問はどのようなときに行うのでしょうか。
裁判で、原告と被告が主張立証を行い、和解の話し合いをしてもうまくいかない場合、最後は尋問となります。
大きな争いとなっている点について、尋問を行うのです。
尋問でえられた証言は、証拠となります。
そこで、尋問は大事です。
当事者尋問のメリット・デメリット
デメリット
公開の法廷で行われる
裁判は、基本は公開の法廷で行われます。
尋問では、デリケートな内容等を話す場合もあります。
そのため、当事者尋問の際、傍聴人がいれば話している内容が傍聴人に聞かれることになります。
虚偽の陳述
尋問の場で宣誓をしたのに虚偽の陳述をした場合には、10万円以下の過料に処せられる場合があります。
ただ、実際は、なかなか虚偽の陳述があったとして過料に課されることはないです。
(虚偽の陳述に対する過料)
e-GOV法令検索民事訴訟法
民事っしょ第209条
宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、10万円以下の過料に処する。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第1項の場合において、虚偽の陳述をした当事者が訴訟の係属中その陳述が虚偽であることを認めたときは、裁判所は、事情により、同項の決定を取り消すことができる。
メリット
直接話すことに重要性
自分自身の言葉で裁判官の前で話すことは、重要です。
話した内容は、証拠となります。
また、裁判官に、人となりを分かってもらえます。
陳述書は証拠としての価値は低い
陳述書でも、自分の体験した事実などを述べることはできます。
一方、陳述書は書面ですが、書面で述べたことについて、相手の反対尋問がなされておりません。
相手が、陳述書の内容について、間違いがないかどうか、質問する機会が与えられておりません。
そのため、陳述書は、自分の言い分を一方的に言っているだけになるので、証拠としての価値は低いです。
尋問の当事者となる者
原告と被告は、通常、当事者尋問で尋問されます。
原告や被告が複数の場合
例えば、次のような事案についてです。
事案
夫は、妻に対しては離婚の訴え、養子縁組をしていた妻の娘に対しては離縁の訴えの裁判をしました。いずれも、1つの裁判で内で審理されています。
原告は夫、被告は妻と娘の2人です。
この事案で、主要な争点は、夫が有責配偶者であるか、夫と妻の間に離婚が認められるかだとします。
娘については、ほとんど争われてないとします。
被告側は、妻の他に娘も尋問したい、娘も原告と被告の夫婦関係を知るものとして尋問したいと主張したとします。
一方、原告側(夫)は、妻も娘も話す内容は同じで、娘を尋問する必要性はないと反論します。
この場合ですが、裁判所としては、娘も被告で当事者なので、尋問を認める傾向があります。
ただし、実際の尋問では、娘については妻と重複します。
手持ち時間が限られているので、それほど尋問に時間をかけるべきではないでしょう。
重要な関係者~証人尋問について~
例えば、次のような事案についてです。
事案
夫が妻に対して離婚の裁判を行いました。
妻は、夫は不倫をした、有責配偶者だとして、離婚は認められないと主張しております。
妻側は、不倫相手とされる女性の尋問も行いたいと考えています。
夫側は、女性を尋問したくありません。
女性がある程度の範囲で男女関係があったことを認めた陳述書が証拠として提出されていれば、妻側としては無理に証人尋問をしなくても良いと考えることもあります。
夫としては、女性と相談ができるのであれば相談をして、女性の陳述書についても話し合って、裁判所に証拠として提出したいところです。
また、夫側としては、女性の証人尋問がないにしても、できれば女性を尋問できない理由を主張立証すると良いです。女性が体調不良で入院することがあれば、診断書などを証拠として提出することが考えられます。
尋問の準備
尋問の前に、尋問が予定される人の陳述書を提出します。
陳述書については、次のブログに記載をしております。
尋問が行われない場合とは?
尋問を行う必要がない場合です。
双方の主張立証で、すでに裁判官が心証を形成している場合です。
例えば、不倫が原因で離婚するかについて争われていて、不倫の決定的な証拠がある場合は、尋問をするに至りません。
また、消滅時効で、消滅時効の起算点が争われることがあります。
例えば、相続により不動産を取得した人が、不法占有を理由に賃料相当額分を請求する場合があります。
この場合、相続をした時点で、相続人は不法占有の事実を知ったと評価して、消滅時効が進行するという考えることができます。裁判官は、相続により不法占有の事実を知ったとは評価の問題だから、尋問まではする必要はないという判断をすることがあります。
また、当事者を尋問しても、あまり意味がない場合も挙げられます。
消滅時効の起算点について争いがある場合で、相続人が賃料を請求できることをしっていたか等です。
いつ知っていたかを尋問で聞いても、明らかとなるものではないです。
評価の問題です。
敵性証人について
端的に言うと、利害が対立する関係にある人が証人であるということです。
具体例を元に考えます。
妻が夫に対して、離婚の裁判をしています。夫は、妻が不倫をしているのではないかとして、不倫相手とされる男性の証人尋問をしたいと考えています。
この場合に、夫にとって不倫相手とされる男性は敵性証人となります。
夫側が、妻の不倫相手とされる男性の証人尋問の申請(証拠申出)を行うことは難しいです。
敵性証人故、不倫相手とされる男性から事前の陳述書の作成を拒否される可能性が高いです。また、コミュニケーションをとることも難しいでしょう。
一方、妻側が、不倫相手とされる男性の陳述書を提出した場合についてです。
妻側が、不倫相手とされる男性の陳述書を提出したけど、証人尋問の申請まではしないことがあります。
この場合は、夫側としては、不倫相手とされる男性の陳述書の内容をまず確認することになります。その上で、夫側としては、不倫相手とされる男性の証人尋問の申請をするかどうか検討することになります。
先行防御としての証人尋問
証人の申請を率先して行うかどうか問われるときがあります。
例えば、離婚の裁判で、妻に不貞があったかどうかが争われているとします。
妻と不貞の相手とされる男性の関係が良好であれば、その男性は妻の味方です。
しかし、妻としては、男性を証人として申請すると、尋問において夫側から不貞についていろいろ聞かれることを恐れております。
一方、妻とその男性の関係がうまくいかず、男性が夫の味方をする場合もあります。
すると、このままいくと、夫が男性の証人尋問を請求することもなくはないです。
そこで、妻としては、尋問において夫側から色々と聞かれることを覚悟して、先行防御として男性の陳述書を作成して男性の証人尋問を請求することが考えられます。
尋問の流れ
状況によります。
だいたい、1ヶ月~2ヶ月先の場合があります。
一方、半年ぐらい先の場合もあります。
尋問までの期間
東京家庭裁判所の場合、他の事件の尋問があったり裁判官のスケジュールなどにより、半年くらい先になることがあります。
例えば、尋問では、悪意の遺棄があるか、慰謝料を夫は妻に支払うかが争点となったとします。
この場合、尋問がなされる半年ほどの先までの間に、財産分与などの話し合いをしていきます。
しかし、財産分与の話し合いなどがない場合は、尋問がなされる半年先まで、待つことになります。
尋問に先立って、陳述書を提出します。
また、証拠申出書も提出します。
陳述書について
尋問期日までに、追加で提出することもできます。
尋問の1ヶ月くらいまでに提出します。
尋問までに再度期日が開かれることがある
尋問までに、証拠等の提出で期日が開かれることがあります。
尋問の準備
弁護士と共に、尋問の準備をします。
弁護士と話し合い、予行演習をしたり、相手の代理人から想定される質問の回答の準備をします。
弁護士と何度か打合せをしてよく話っておくことで、いざ法廷で相手の代理人からなにか質問されても、対応できるようになります。
相手方の弁護士の質問ですが、尋問前に提出される証拠申出書の中の尋問事項をみれば、予測がつきます。また、これまでの主張立証で提出された書面に関することも聞いてくることが想定されます。
事前準備として準備するものとしては、
・1つ1つの尋問内容
・1つ1つの尋問内容に対応する証拠
・尋問の場で、相手に提示する証拠
などになります。
尋問の時間をオーバーしそうな場合
主尋問を短くして、反対尋問を厚くすることが考えられます。
そのために、事前に、陳述書で、主尋問で話すことを記載しておきます。そうすれば、尋問では、主尋問は短くして、反対尋問に時間をかけることができます。
裁判所の次のページに記載があります。