離婚・男女問題に取り組む弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。
次のような事案の場合、不倫相手の女性が気をつけることは何でしょうか?
10年もの間不倫をしていました。
ずっと付き合っていたわけではなく、 別れたりよりを戻したりと断続的に不倫を繰り返していました。
男性の妻は、既に8年前から不倫の事実と私は不倫相手であることを知っています。
妻には申し訳なく思い、妻との間でメールでやりとりをして話し合っていました。
しかし、妻から慰謝料の訴訟を提起されそうです。
はじめに
この場合、不倫相手の女性としては、妻との関係でどういう点に気を付けたら良いでしょうか?
まず、長い間断続的に不倫をしているので、慰謝料請求権の消滅時効を主張することが考えられます。
不倫の場合の消滅時効は、妻が不倫の事実と不倫相手を知ってから3年です(妻が不倫の事実や不倫相手を知らなかったら20年ですが、今回は省略します)。
断続的な不倫関係の場合の消滅時効の起算点は?
断続的な不倫の場合でも、同じと考えて良いでしょう。
断続的かどうか、証拠がないかぎり全体として1つ(不可分一体)として考えることができます。
断続的な部分をそれぞれ1つとして分断可能ならば、断続的な部分がそれぞれ別個に消滅時効が進行していくと考えることができます。
裁判所の判断も、このような理解に基づいていると思われます。
妻が不倫の事実と不倫相手を知っている場合、消滅時効は3年です。
参考になる判例
参考になる判例があります。
最判平6.1.20(判時1503・75)です。
夫が不倫相手と同棲を継続していた事案です。
この点について、裁判所は、同棲が継続しているならば、全体として評価して、同棲関係の終了時から消滅時効が進行するという考えがあります。
妻が同棲について知っているかにかかわらず同棲関係の終了時点から消滅時効が進行するという考えです。
しかし、裁判所はこの考えをとりませんでした。
裁判所は、同棲関係を全体的として1つの違法行為ととらえていず、個別の違法行為と評価したのです。
そこで、妻が同棲関係について知った時から、慰謝料請求の消滅時効が進行するとしました。
そのため、裁判を提起した日より3年以上前に妻が夫の同棲を知っていれば、消滅時効が成立することになります。
冒頭の事案の場合(断続的な不倫)
断続的な不倫が続いていて、妻は不倫について8年前から知っています。
そこで、断続的な不倫の場合でも、分断が可能では無く不可分一体といえるならば、不倫の事実と不倫相手を知った時から3年の消滅時効は進行します。
不倫相手の女性が注意をすること(消滅時効の中断)
とくに、「債務の承認」には気をつけるべきです。
不倫を認めて慰謝料を支払うと妻に伝えれば、消滅時効が中断します。消滅時効の完成後の場合だと、 認めてしまったら消滅時効の援用ができなくなります。
そこで、できるなら妻とは直接コンタクトしない方が良いでしょう。
妻と直接メールなどでやりとりをすることは、慎重な判断が必要です。
弁護士の活用のしどころ
不倫が発覚したら、できるだけ早く弁護士に相談に行った方が良いでしょう。
消滅時効が完成していたら、消滅時効の援用の通知書をベ弁護士に送付してもらいましょう。
妻とどう接したら良いかなどをアドバイスもらいましょう。
状況によって、代わりに妻との交渉をまかせることも必要です。