生活の立て直しを支援する、弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。
時効の援用の通知書の書面のチェックを頼まれる時があります。
持参いただいた時効援用の通知書の内容をみますと、かなりしっかりと作成されている場合があります。
今はインターネットで雛形の書面が手に入るので、雛形の書面を自分自身の場合に当てはめて作成されるようです。
消滅時効の援用の通知書の作成について
時効は、基本的には5年か10年で消滅時効にかかります。
会社などの法人が相手の場合には、一般的には5年であると考えることができるでしょう。
その他の場合は、10年で消滅時効にかかります。
民法の一部が改正されて令和2年に施行されました。
そして、従来、商事債権の時効期間が5年と定められていましたが(商法522条)、改正されました。
商事債権であるかどうかにかかわらず、
・債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
・権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
に、債権が時効によって消滅します。
また、ごく短期の消滅時効もあります。
例えば、飲食店に対する飲食代金の支払債務は、1年とされています(2018年末現在)。
その他、法の規定するところにより、消滅時効の期間が異なる場合があります。
また、短期の消滅時効は、民法の改正により廃止されております。
信用情報機関で自分の負債の状況を確認する
信用情報機関に問い合わせて、自分の負債の状況を確認しましょう。
実際に確認してみることで、気づかなかったことも気づくことがあります。
信用情報機関としては、CICなどがあります。
→CIC
信用情報機関の窓口で自分の信用情報開示報告書を受け取ることが出来ますし、インターネット上でも開示をうけることができます。
ご自身で作成を試みる方の悩み
時効の援用の通知書のご自身で作成して内容証明郵便を送ることになります。
作成された方が悩まれているところとしては、次の点などです。
最終の支払日がはっきりしない
信用情報機関から自分自身の債務の状況の書面を取り寄せたとしても、最終の支払日がはっきりしないことがあります。
そこで、時効援用の通知書にどのように記載するか悩まれます。
この点については、最終の支払日を全く記載しないという方法が考えられます。
もしくは、何年何月何日「頃」とぼかして書くこともできるのではないかと思います。
実際に、最終の支払い日を記載しなくても時効の援用はできます。
通知書を送付する時点の正確な債務の額が分からない
債務の金額を記載しないか、記載をしたとしても「約」とぼかして記載しても、債務の特定はできているのではないかと思います。
会員番号を失念した
相手が消費者金融や銀行の場合、自分自身の会員番号を失念したので、会員番号の記載をしなくても大丈夫だろうかと悩まれる方がいます。
しかし、ご自身のお名前と生年月日を記載していれば、個人の特定ができるので大丈夫です。
弁護士の活用のしどころ
時効の援用の通知書の作成で不安でしたら、弁護士に書面をみせて確認してもらいましょう。
また、弁護士を代理人として、弁護士の名前で時効の援用の通知書を出してもらうこともできます。弁護士の名前入りの通知書ですので、安心ですね。
注意点
支払うと時効の中断になる
1回でも債権者に支払いをすると、債務の承認をしたことになり、時効が中断してしまいます。
そのため、支払いについて気をつけるべきです。
債権者への問い合わせは控えた方が良い
また、例えば自分の会員番号がわからない、最終の弁済時期が分からないということで、債権者に問い合わせるというのも、時効の援用との関係では控えた方が良いでしょう。
その後、債権者が請求をしてくる可能性がなきにしもあらずです。
配達証明付きで内容証明郵便を送付
その他、内容証明郵便で送付する場合には、相手方に届いたことを証明するために、配達証明をつけて送付するべきです。
最後に
実際に時効の援用をされる方は、1社あたり数万円から数十万円ぐらいの多くはない債務で、引っ越しをして住所を変更された方が多いのかなと感じました。
本来は、借金がある場合には返済をすることが義務です。
そして、多額の借金を抱えても支払う人も当然いらっしゃいます。
一方、時効の援用も制度としてあります。そこで、借金で心が晴れないなどやむを得ない場合には、時効の援用も積極的に活用した方が良いでしょう。