建物の立退きについて~建物の老朽化を理由とする場合~

新宿区新大久保に事務所がある、弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。

建物が老朽化したので、賃借人に立退きを求める際の進め方などについてです。

はじめに~建物老朽化のために立ち退いて欲しい~

相談者

貸している建物から立ち退いて欲しいのです。耐震診断で、立替えが必要なのです。
しかし、賃借人は、立ち退いてくれません。

弁護士水谷が考えている状況
弁護士水谷

立退きの場合は、「正当事由」が必要ですよね。
賃借人に、立退料を支払って立退きの話し合いはできないのですか?

相談者のメガネをかけた中年男性
相談者

賃借人は、土地を売って下さいとしか話さないです。
どうしたらよいでしょうか?

弁護士水谷が考えている状況
弁護士水谷

お互いに、弁護士が代理人としてつければ、話し合いで解決する可能性はありますね。立退料をいくらにするか話がまとまれば、合意ができそうですね。

話し合いで解決がつかないのならば、あとは裁判になりますね。

交渉段階

解約の通知を送る

まず、賃貸人は賃借人に対して、解約の申入れの書面を送ります。証拠になるので内容証明郵便で送ると良いですね。
借地借家法に規定があります。

(解約による建物賃貸借の終了)
借地借家法第二十七条 
建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
 前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。

引用元:e-GOV法令検索(民法)

なお、解約には、正当事由が必要となります。
次のように規定されております。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
借地借家法第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

引用元:e-GOV法令検索(借地借家法)

正当の事由については、
・建物の賃貸借に関する従前の経過
・建物の利用状況及び建物の現況
・建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出
が考慮されます。

誠実に交渉する

裁判を想定して、誠実に交渉をします。

裁判になる場合

誠実に交渉をしても、話し合いがつかないのならば、訴訟提起となります。

建物の老朽化についての裁判例ですが、次の内容の裁判例があります。

以上によれば,本件建物は,本件賃貸借契約の解約申入れの時点で,竣工後50年以上を経ており,老朽化が相当に進行し,耐震性の点でも危険性を否定することができず,耐震補強を行うには相当の費用がかかるのであって,建て替えることが望ましいものであること,原告は,本件建物の敷地を含む土地全体について開発計画を有し,そのために,本件建物の近隣の土地については取り壊しが進み,本件建物についても本件貸室ともう一室を除き空室になっており,原告には,本件貸室の明け渡しを求める必要性が認められる。他方,被告らは,本件貸室において,昭和63年から長年に渡りゴルフ場会員権の販売の営業を行ってきており,被告会社が本件建物の周辺で営業を行うことによるメリットは大きく,本件貸室を利用する必要性は認められるものの,被告会社の営業が本件貸室でなければ行えないというほどの必要性があるとまではいえないのであって,本件貸室の明け渡しを求める必要性が,被告らが本件建物を使用する必要性より高いと認めることができる。もっとも,原告は,被告らが本件建物から立ち退くことを前提に開発を計画して,本件建物を取得したものであることや,被告ら側が明渡しにより被る不利益を考えると,上記本件建物の状況及び原告側の事情のみで正当事由を具備するには足りないというべきであり,原告が被告らに生じる不利益を一定程度補うに足りる立退料を支払うことによって,正当事由が補完されるものと認められる。なお,被告らは,立ち退き交渉における原告の対応が不誠実であると主張するが,前記認定の事実によると,被告らとの条件が合わなかったとはいえ,原告は,相当の期間をかけて交渉を行い,立退料の提示や代替物件の紹介も行ったのであり,交渉の状況が不誠実であるとまでは認められない。

東京地方裁判所 平成23年(ワ)第3599号 建物明渡請求事件 平成24年11月1日

この裁判例の内容ですが、

・建物は築50年以上であり、老朽化が相当進行していること
・原告は、開発計画があり、建物の明渡しを求める必要性があること
・被告はゴルフ場会員権の販売の営業をしているが、営業が建物の部屋でなければ行えないほどの必要性があるとまではいえないこと

などを理由として、原告の請求を認容しています。
立退料として、金311万7300円の支払いと引き換えに、建物の明渡しを認容しています。

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この記事を書いた人

弁護士水谷真実

弁護士水谷真実

東京の新宿駅の近くの新大久保で、弁護士事務所開業。弁護士10年目の若手。離婚事件、一般民事事件、新大久保近辺に住む方々の事件、外国人の事件。ブログは主に仕事、その他気の向くままに。
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