新宿区新大久保に事務所がある、弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。
債務整理中の引っ越しについて書きます。
以下では、弁護士が代理人となっている場合を前提にして説明いたします。
はじめに
債務整理の手続き中に、引っ越しをする場合があります。
債務整理中に、引っ越しはできるのか心配になることがあります。
引っ越しすることで、債務整理の手続に影響が出ないか、心配になったりします。
この点については、憲法では居住移転の自由が保障されています(憲法22条1項)。
憲法第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
引用元:e-GOV法令検索(憲法)
そこで、引っ越しも本来は自由にできます。
任意整理の場合
任意整理は、裁判所をとおしての手続ではなく、債権者との交渉によるものです。
任意整理では、債権者により多少異なりますが、どちらかといえば、過去の取引期間の長さや、債務の額の大きさなどが重視されます。
引っ越しをしたからといって、なにか任意整理の手続に影響が生じるわけではありません。
弁護士が最初に受任通知の書面を債権者に送付しますが、受任通知の書面に債務者の住所を記載します。
債務者の住所が、債権者側で登録している住所と異なっていれば、債権者から旧住所を聞かれます。
債権者から旧住所をきかれるだけで、引っ越しがダメというわけでは全くありません。
そして、債権者と話し合いがついて、和解となります。
その際、債権者が住所の確認をしてくることが多いです。
引っ越しをしていれば、引っ越し先の住所を伝えることになります。
任意整理の場合は、引っ越しをしたからといって、なんら話し合いには影響ありません。
自己破産の場合
自己破産の手続ですが、裁判所に申立てをしてすすめていく手続です。
自己破産の場合は、自己破産の申立て前は引っ越しは自由にできます。
一方、自己破産の申立てをして裁判所が破産手続開始決定を下した後は、引っ越しには裁判所の許可が必要です。
引っ越しに裁判所の許可が必要な期間は、自己破産の手続が終了するまでの間です。そのため、だいたい、3か月くらい、債権者集会などが1回で終われないと数か月くらいかかることもあります。
自己破産の手続き中に引っ越す場合は、代理人の弁護士を通じて、裁判所にしっかり事情を説明することです。
しっかり事情を説明すれば、そんなに心配することではないでしょう。
なお、参考までに、以下に引っ越しに裁判所の許可が必要な根拠条文を掲載します。
(破産者の居住に係る制限)
引用元:e-GOV法令検索(破産法)
破産法第三十七条
1 破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。
2 前項の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる。
(定義)
引用元:e-GOV法令検索(破産法)
破産法第二条
4項 この法律において「破産者」とは、債務者であって、第三十条第一項の規定により破産手続開始の決定がされているものをいう。
(破産手続開始の決定)
引用元:e-GOV法令検索(破産法)
破産法第三十条 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、破産手続開始の決定をする。
個人再生の場合
個人再生の場合は、引っ越しについてなにか制限があるわけではありません。
個人再生の申立てをした後に引っ越す場合は、弁護士を通じて裁判所に説明をしておくと良いでしょう。