裁判における和解について

裁判における和解についてです。

裁判において、当事者双方が主張立証を行い、争点などについてある程度事実が明らかとなってきます。
すると、裁判官が、一定の主張反論がなされたら、裁判所の和解案を提示しますかと述べてくることがあります。
または、裁判所ではなく当事者がまず和解案を提案することもあります。

まこと法律事務所の事務員さん
事務員さん

裁判における和解とはどのようなものなんですか。
和解の話し合いはよく行われるんですか。

弁護士水谷真実の写真
弁護士水谷

裁判では、和解の話し合いはよく行わます。
裁判官としては、判決で一方的に決めてしまうよりは、当事者が和解でお互いにある程度納得した形で終わらせて欲しいと思っているはずだよ。
判決よりも和解の方が、お互いの意志が反映されるからね。

裁判における和解の手続の流れ

双方が主張立証する
和解の話し合い

裁判の途中で、裁判所が、和解を提案することがあります。
そして、裁判官が、和解案を提示します。
和解案は、様々です。計算式と金額を示した簡易な内容の和解案を裁判官が提示することがあります。もしくは、判決文の簡易バージョンのような理由を記載した和解案を裁判官は提示することもあります。

一方、当事者のどちらかが和解の話し合いをしたいと述べることもあります。
そして、和解する場合の金額は、裁判官の方から提示して下さいと述べることもできます。

当事者が和解案を提案することもあります。

裁判所の部屋にいる弁護士や裁判官と電話で話せる
代理人弁護士が裁判所の部屋で裁判官と話します。
このとき、携帯電話で代理人弁護士と話せます。
裁判官と話すこともできます。
ですので、和解の時間帯は、携帯電話で話せる状況にしておくと良いです。

和解成立

和解が成立して、終了となります。

当事者双方が裁判所に不出頭で和解をする場合の手続
裁定和解の手続(民事訴訟法265条)となります。
そこで、当事者双方は、「裁判所等が定める和解条項の申立書」を裁判所に事前に提出する必要があります。

(裁判所等が定める和解条項)
第二百六十五条 裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。
2 前項の申立ては、書面でしなければならない。この場合においては、その書面に同項の和解条項に服する旨を記載しなければならない。
3 第一項の規定による和解条項の定めは、口頭弁論等の期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。
4 当事者は、前項の告知前に限り、第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。
5 第三項の告知が当事者双方にされたときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。

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  そこで、当事者双方は、「裁判所等が定める和解条項の申立書」を裁判所に提出する必要があります。

和解条項はお互いの考えと裁判官の意見を踏まえて作成される

和解条項は、当事者の一方が一方的に提案してそのまま決まる訳ではありません。

例えば、
被告が和解条項案を提出
  ↓
原告が修正した和解条項案を提出
  ↓
被告がさらに修正した和解条項案を提出

となり、被告が最後に提出した和解条項案でそのまま和解となるわけではありません。

裁判官が、お互いの意図をくみ取り、公平な立場から和解条項を改めて作成します。

裁判の相手側から和解条項案がだされて、納得できない、ふざけるな!と思うこともあります。
しかし、あくまで相手が相手の立場で提案したにすぎません。
裁判官がきちんと調整をしてくれるので、大丈夫です。

不倫の裁判の場合の和解について

和解の話し合いまで時間がかかることがある

お互いが主張立証を尽くしたところで、裁判官が和解を提案してくることがあります。
当事者のどちらかが、和解の話し合いを求めることもあります。

不倫の裁判の場合は、慰謝料の金額の他に、
・今後は不倫関係を行わない
・連絡や接触をしない
・口外しない
・求償権を放棄する場合は放棄する旨の内容
を和解条項に記載します。

感情的な対立が激しい場合、例えば、裁判の当事者が妻と不倫相手の女性の場合には、和解の話し合いに至るまでそれなりに時間がかかることがあります。

早い段階で裁判官が和解の金額を提案してくることがある

訴訟の早い段階で、裁判官が和解の金額を提案してくることがあります。
第1回目の期日を被告が欠席し、次の2回目の期日には、裁判官が和解の提案をしてくることがあります。
裁判官が当事者の話を聞き、早期の和解もありえる場合です。
例えば、夫と不倫相手の男との間の裁判において、夫側の主張立証がしっかりとしている場合などです。長く争っても有益ではないと双方が判断すれば、早期の和解も考えられます。

婚約破棄の慰謝料裁判の和解の場合

婚約破棄の慰謝料請求の裁判の場合は、お互いの感情的な対立が強いことがあります。
婚約破棄の慰謝料が認められるための要件、すなわち、婚約が成立していたか、婚約破棄があったか、損害があるか、因果関係があるか等の要件を主張立証することは、それなりにハードルが高いです。

裁判所は、ある程度幅を持たせて和解する場合の金額を提示することがあります。
この場合は、金額をまずお互いに確定させた上で、その他の条件を定めるのが良いです。
相手に守って欲しい義務、例えば、連絡しない、口外しない、つきまとったりしない等の義務を具体的に考えることになります。

貞操権侵害の慰謝料請求の裁判の和解の場合

事案

マッチングアプリで出会う。そして、深い関係になったが、交際が終了する。
そして、実は相手の男性が既婚者であった。

裁判所が提案する和解案

交際期間が長かったり、相手の男性の言動等が行きすぎていた場合は、金銭の支払いとなるでしょう。

一方、交際期間が短かったり、女性にも何らかの非がある場合は、慰謝料の支払いが認められないこともあります。
裁判官は、
・男性は婚姻中にもかかわらず交際したことは社会的にみて不適切なので、認めて謝罪
・債権債務はなし
で和解するよう提示することがあります。

控訴審で裁判所が提案する和解案

控訴審において、裁判長が判決の言渡し日を指定した上で、裁判長が裁判官に指示して和解の話し合いを行わせる場合があります。

この場合、裁判官は、1審の裁判官とは異なる提案をしてくる場合があります。
裁判官は、男性側に対して、和解金を支払って和解するよう説得してくる場合があります。
裁判官は、「私は過去に多くの事件を担当したけれども、お金を支払わなかったばかりに、あとでいろいろとトラブルになったケースを沢山みてきたから、いくらかでも支払いなさい。20万円ぐらい払えるでしょ。」と男性側に熱心に伝える場合があります。

裁判官によるのでしょうが、裁判官の説得により、男性側も納得して、和解にいたる場合もあります。

離婚の裁判の和解について

離婚の裁判においては、どのような財産があるのかなどによって、和解の内容も異なってきます。
ここでは、単純に金銭をいくら支払って和解について考えます。

離婚の裁判において、ある程度審理が進んだ段階で、和解の話し合いが行われる場合があります。

和解の金額でお互いに譲らないとき

そして、和解の話し合いにおいて、原告と被告との間で開きがあって、なかなかまとまらない場合があります。
このとき、最終的に裁判官に金額など決めてもらうと良い場合があります。

具体例としては、
夫 100万円を支払って和解をして離婚すると主張している
妻 200万円支払ってくれるならば離婚をすると主張している

状況によっては、和解が流れてしまい、その後の裁判で激しくやりあいかねません。
そこで、裁判官に和解の金額を決めてもらうことが考えられます。

裁判官にもよりますが、間を取って、150万円の金額で離婚をする和解案を提案する場合があります。

裁判官に理解してもらえるよう訴えかける

最終的に、裁判官に和解案を提示してもらう場合があります。
そこで、事前に、裁判官に実情を理解してもらう必要があります。

準備書面や陳述書や和解に関する意見書を通して、裁判官に精一杯伝える必要があります。
夫婦同士では事態の改善の見込みがない状態となっていることや、現在の不安、離婚後の新生活の不安等を裁判官に理解してもらいます。
裁判官に理解してもらった結果、正当な審議が下され、納得いく和解案が提示されるでしょう。

過去の賃料相当額の損害賠償請求の和解の場合

裁判官に和解案を作成してもらうとスムーズに和解が進みます。

裁判官は、計算結果だけを記載した和解案を提案することもありますし、理由を詳細に記載した和解案を提案することもあります。

時効の問題があるのならば、お互いの主張の間の金額になることもあります。
家の賃料に相当する金額がはっきりと分からないのであれば、それまで証拠として提出してきた資料(近隣の似た物件の賃料など)等を元に裁判官が賃料を定めて計算して提示します。

簡易裁判所から地方裁判所へ移送された場合の和解について

簡易裁判所で審理が行われても、地方裁判所へ移送されることがあります。
主張立証に時間がかかったり、場合によっては当事者尋問をしっかりやらなければならない場合等です。

地方裁判所へ移送されると、地方裁判所の裁判官は、審理を続行することもあります。
一方、簡易裁判所で長く審理をしていても、いきなり和解案を提案してくることもあります。

まこと法律事務所

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この記事を書いた人

弁護士水谷真実

弁護士水谷真実

東京の新宿駅の近くの新大久保で、弁護士事務所開業。弁護士10年目の若手。離婚事件、一般民事事件、新大久保近辺に住む方々の事件、外国人の事件。ブログは主に仕事、その他気の向くままに。
ご相談いただいたことは、一生懸命対応します。アフターフォローにも力を入れています。来所が難しい方のために出張相談を承ります。悩んだら、思い切ってお問い合わせ・ご相談ください。

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