離婚や男女問題に注力する弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。
離婚の際、婚姻費用(生活費)をどうするか、調停で争われる場合があります。
では、弁護士の場合はどのようにして婚姻費用を決定するのでしょうか。
以下では、個人事業主としての弁護士の場合について説明いたします。
証拠となる資料としてどのようなものがあるか等について、説明します。
原則は確定申告書などの資料
婚姻費用の定め方について、原則は算定表に基づいて算出します。
弁護士の場合は、確定申告書を元にして、算定表にあてはめます。
個人事業主として活動している弁護士の場合は、確定申告をしております。
そこで、確定申告の書類などをみて、婚姻費用をどうするか決定します。
ただ、実際の生活状況と確定申告の書類の内容の金額に齟齬があるのではないか、と思われる場合があります。
確定申告書の収入の金額が少なかったり、経費が過大である場合などです。
確定申告書の内容が不自然な場合、例外として他の資料に基づくこともあります。
弁護士の経費率を示す資料
賃金センサスは、基本的には給与を得ている人達のデータが載っております。
そのため、個人事業主として活動している弁護士に、賃金センサスはあてはまりません。
個人事業主として活動している弁護士の場合は、「弁護士白書」(日本弁護士連合会)や法務省の資料である「法曹の収入・所得,奨学金等調査の集計結果」(平成28年7月)が参考になります。
弁護士白書については、2016年板と2018年板に、経費率を示すデータ(弁護士のアンケート結果などです)が載っております(令和2年10月現在の話です)。
弁護士の収入、経費、所得などが載っております。
そこで、どのくらいの経費率かを算出することができます。
そして、法務省の資料を元にして、個人事業主の弁護士の経費率を算出することもできます。
「資料4-1 法曹の収入・所得,奨学金等調査の集計結果(平成28年7月)」に記載があります。
調停・裁判における主張立証の仕方
確定申告書のおかしな点を指摘する
例えば、確定申告書によると、営業の所得金額がマイナスで、営業による収入を得るためにそれ以上の経費をかけていることを指摘します。
ここで、経費とは「収入を得るために必要になる出費」のことをいいます。
そのため、収入よりも経費が多くなることは不自然です。
収入と経費の関係についての証拠
証拠として、インタネットなどから税理士の見解の書面を提出することが考えられます。
例えば、「【税理士監修】個人事業主の経費はいくらまで?上限や割合を解説!」などを証拠として用いることが考えられます。
弁護士白書や法務省の調査結果の書面は信頼できることを主張
調査主体は法務省で、調査協力が最高裁判所と日本弁護士連合会であり、信頼できることを主張します。
また、発送数、回収数、回収率などから大規模な調査であることを主張します。
確定申告書を用いなくてはならない特段の事情はないことを主張
他の弁護士と異なり、なにか特殊な事情で経費を多く支出する事情は特段ないことを指摘することになります。
そこで、確定申告書内の所得に基づくのではなく、弁護士白書や法務省の調査結果を用いるべきことを主張します。
弁護士の平均的な経費率を算出
弁護士白書や法務省の調査結果の書面における、弁護士の平均的な経費率を算出します。
弁護士の経費率について、同じ期の弁護士の経費率をみていきます。
だいたい、50%台になるかと思います。
そして、割合(パーセンテージ)が算出されたら、事案にあてはめることになります。