婚姻費用~不倫等との関係~

夫婦が別居後、一方が他方に対して、婚姻費用の調停を申し立てたとします。
申し立てた側は、不貞の疑いがあります。
次のような事案を想定します。

事案

妻:婚姻費用の調停の申し立て、不貞の疑いあり

夫:相手側

この場合、妻は婚姻費用をえることができるでしょうか。夫は、婚姻費用を支払わないといけないでしょうか。

裁判例

妻の暴力等

妻が夫に対して、婚姻費用の請求をした事案です。

不倫の事案ではありません。

妻が長男に暴力を振るっており妻の責任が極めて重いこと、妻の年収、夫が妻の住む住居の住宅ローンを支払っていること、夫が長男を養育して教育費などを支出していること等を理由として、妻の夫に対する婚姻費用分担請求は信義則に反しまたは権利濫用にあたるとして許されないとしております。

裁判所は、次のように判断しました。

別居と婚姻関係の深刻な悪化について,その経過の根底には,相手方の長男に対する暴力行為とこれによる長男の心身への深刻な影響があり,相手方の責任が極めて大きいとして,相手方の年収,現在も抗告人が相手方の住む住宅ローンを支払っていることや,長男を養育し,その教育費等を支払っているなどの経済的状況に照らせば,抗告人に対する婚姻費用分担請求は信義に反し,又は権利の濫用として許されない

引用元:東京高等裁判所決定/平成30年(ラ)第2010号

妻の責任が極めて大きいなどとして、妻からの婚姻費用の分担請求を信義則違反、権利濫用であり許されないと裁判所は判断しました。

妻の不倫

妻が夫に対して、婚姻費用の請求をした事案です。

不倫の事案です。

裁判所は、妻の不貞行為を認定した上で、妻の夫に対する婚姻費用分担請求は、信義則や権利濫用の見地から、子どもの養育費相当分に限って認められると判断しました。

裁判所は、次のように判断しました。

  夫婦は,互いに生活保持義務としての婚姻費用分担義務を負う。この義務は,夫婦が別居しあるいは婚姻関係が破綻している場合にも影響を受けるものではないが,別居ないし破綻について専ら又は主として責任がある配偶者の婚姻費用分担請求は,信義則あるいは権利濫用の見地からして,子の生活費に関わる部分(養育費)に限って認められると解するのが相当である。
   しかしながら,上記1(2)で補正の上引用した原審判の認定事実によれば,抗告人と相手方が平成25年に再度同居した後,相手方は本件男性講師と不貞関係に及んだと推認するのが相当であり,抗告人と相手方が平成27年□月に別居に至った原因は,主として又は専ら相手方にあるといわざるを得ない。相手方は,上記不貞関係を争うが,相手方と本件男性講師とのソーシャルネットワークサービス上の通信内容(乙4,5)からは,前記のとおり単なる友人あるいは長女の習い事の先生との間の会話とは到底思われないやりとりがなされていることが認められるのであって,これによれば不貞行為は十分推認されるから,相手方の主張は採用できない。そうとすれば,相手方の抗告人に対する婚姻費用分担請求は,信義則あるいは権利濫用の見地から,子らの養育費相当分に限って認められるというべきである。

引用元:大阪高等裁判所 平成28年(ラ)第38号 婚姻費用分担審判に対する抗告事件 平成28年3月17日

調停での進行

婚姻費用分担請求の調停では、次のような流れが1つの流れとして想定されます。

婚姻費用分担の調停の申し立て

妻が家庭裁判所に対して、婚姻費用分担の調停の申し立てをします。

答弁書の提出

夫は、答弁書を提出します。
答弁書で、妻が不貞行為をしたのだから、婚姻費用は認められないと主張します。
裁判例に基づいて主張します。

その後の調停の期日

その後の期日において、裁判官に、その段階での心証を聞くことが考えられます。

婚姻費用分担の調停において、不貞行為があったか否かなどについて深掘りすることが、あまり意味がない場合があります。
この場合には、調停委員や裁判官と話して、調停不成立にすることが考えられます。
調停が不成立となれば、自動的に審判となります。
婚姻費用の審判では、裁判官が判断を下す場合は、算出される婚姻費用か0円かのどちらかです。子どもがいる場合は、子どもの養育費の分だけ認めるという判断がされることもあります。

夫の立場

夫としては、妻が有責配偶者であるという主張が審判で通らないリスクはあります。
そこで、調停段階で、夫が妻に対して、算定表に基づいた金額ではないにせよ、減額した金額を提案することが1つの方法として考えられます。

ただし、どうしても妻の態度が許せない、妥協すると妻が反省しないのではないか等と考えられる場合は、妥協しないことも考えられます。
審判で、裁判官に判断してもらうのも1つの手です。

妻の立場

妻についても、同様です。
自分が有責配偶者と認定され、婚姻費用が全くもらえないリスクがあります。
そこで、減額した金額を妻から提案することも考えられます。

夫の態度が頑なであり、話し合いの余地がなければ、審判も考えられます。
一方、審判を行っても状況が芳しくないことが見込めるのであれば、申立てを取り下げることも考えられます。
婚姻費用分担の調停の申し立ては、相手の同意を得ることなく、一方的に取り下げられます(家事事件手続法82条1項2項)。

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この記事を書いた人

弁護士水谷真実

東京の新宿駅の近くの新大久保で、弁護士事務所開業。弁護士9年目の若手。離婚事件、一般民事事件、新大久保近辺に住む方々の事件、外国人の事件。ブログは主に仕事、その他気の向くままに。
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