DVやモラハラを受けた場合の対応法

DV・モラハラとは?

DVは、配偶者や交際相手から暴力をふるわれることです。

モラハラとは、端的にいいますと精神的なDVのことです。
暴言をはかれたり罵倒されたりすることです。

夫婦間の離婚の理由として、DVやモラハラが最も多いものの1つです。
もしくは、夫婦間で性格の不一致やセックスレスとなり、最後にDVが原因で離婚に至る、ということもままあります。

DVやモラハラの具体的な場面

  • 暴力をうけた場合
    暴力を受けている場合配偶者から、殴られたり蹴られたりする場合です。
    例えば、手足で殴られたり蹴られたりする、首を絞められる、物を投げつけられる、髪を引っ張られたりする場合などです。
  • 暴言や罵倒された場合
    配偶者から、心を傷つけられたり、精神の障害(抑うつ状態、不眠、PTSDなど)を負ったりするような言葉を投げかけられたり、振る舞われたりする場合です。
    例えば、家事ができないと言われる、子供も自分もだらしないと言われる、大声で怒鳴られる、人がいる前で馬鹿にする、無視をされる、仕事を辞めさせられる、さらに新たな仕事をさせられる等です。
  • 無理矢理性行為をしてくる場合
    性的に無理な要求をしてくる場合です。
    例えば、無理矢理キスをしてくる、性行為をしたくないのに寝ているときに無理矢理性行為をしてくる、中絶を強要してくる、避妊に協力しない等です。

DV・モラハラの怖いところ

感覚が麻痺してくる

DVなどは、次のような段階をえて、段々と抜け出せなくなるおそれがあります。

まず、配偶者や交際相手から暴力を振るわれたり罵倒されると、だんだんと感覚が麻痺をしてきます。
相手からひどいことをいわれ、おまえがすべて悪い!などといわれ、だんだんとそうなんだと思ってします。

その後、相手は必ず謝り、そしてすごく優しくなります。

このような状況が繰り返され、だんだんと周りの家族や友人・知人の注意などを聞けなくなってきます。

そして、自分がいなければこの人は駄目になると考えたりします。

このようなプロセス等をえて、依存関係ができたり洗脳状態となっていきます。

夫婦や婚約状況にある場合は、責任感や使命感のようなものも抱いているでしょう。
ですので、なおさら、関係を保たなくてはと思うこともあるでしょう。

対策~周りの救いの声に耳を傾けること~

自分を心配してくれる人の声に、真摯に耳を傾けることです。

DV被害に何度もあっていると、DVが当たり前のように思い相手をかばうこともあるかもしれません。
まだやり直せると思うかもしれません。

周りの人、例えば被害を訴えにいった警察の警察官が
「早く別れなさい。別れが遅くなると、大変なことになるよ!被害届をだすならば早く出しなさい!」と強く諭してくれることがあります。

厳しく優しく諭されて目が覚めることもあります。

自分の周りの人の声に耳を傾けることです。

DVやモラハラをうけた場合の証拠について~証拠は大切~

証拠を確保する

暴力(DV)の場合


配偶者からDVをうけてけがをした場合は、すぐに怪我をした部分の写真をとりましょう
また、すぐに病院にいって治療をうけて、診断書ももらいましょう。

モラハラ(精神的DV)の場合

モラハラ(精神的DV)の場合は、録音しておくと良いでしょう。

例えば、夫が妻に対して、同居をしている最中に、暴言などを散々発しました。しかし、その後、離婚裁判などで、夫は否定をします。逆に、妻からひどいことを言われたなどと主張してくることも考えられます。

実際、録音がないと、本当に夫から妻に対して、暴言があったか、分かりません。
録音の証拠があれば、夫か妻のどちらが正しいかが分かります。

なお、録音があっても、直ちに慰謝料が多くもらえるというわけではないです。
しかし、モラハラの録音を証拠として相手に提示することで、相手が反省したり、その後の対応が変わってくることも考えられます。


その他の方法としては、言われたことをノードなどに詳しく書き記しておきましょう

相手が逮捕された場合の対応

50代女性(悲しんでいる)
相談者

夫から暴力を日常的にふるわれていました。

夫は警察に逮捕されてしまいました。

捕まったままでは、夫がかわいそうです。捕まったのは今回が初めてなので、2~3日もすれば釈放されると思います。
そのため、被害届を早く取り下げないと、夫の関係が悪化するのではと思います。
しかし、警察に被害届の取下げの相談にいっても、警察は被害届の取り下げの話をきいてくれません。
どうするのが良いでしょうか?

弁護士水谷(考える)
弁護士水谷

警察官は、DVの被害者の相談をたくさんうけております。
沢山の被害者と接しているからこそ、相談者さんを救おうとして対応しているのかもしれません。
2~3日後に釈放されても、まだ捜査は続きます。
被害届の取り下げは、夫が釈放されてからでも遅くはないです。
長く勾留されるようなら、被害届の取り下げも検討するべきですね。

役所にDV被害を確認できる書類の提出が必要な場合がある

2020年に新型コロナウィルスが流行しました。

その際、国は現金10万円の支給を決定しましたが、世帯主に対して現金が給付されます。

そうしますと、DV被害で別居して避難している場合、住民票を別の場所へ移していれば、現金給付を受けられます。
一方、住民票を移しておらず世帯主である加害者と一緒の場合は、現金の給付を受けられなくなりそうです。

そこで、住民票を移していないDV被害で避難している人のために、現金給付を受けられるようにしました。
具体的には、DV被害を確認できる書類を提出することです。
例えば、裁判所からの保護命令決定書や、配偶者暴力相談支援センターや市町村などにDVについて相談したときの証明書等です。

ですので、DVの被害を受けている場合、積極的に役所や支援機関に相談したり、弁護士へ相談すると、公的な支援が受けやすくなる場合があります。

別居した場合:住民票の交付等の制限

DV等で別居して、配偶者に自宅等を知られたくない場合についてです。

子どもがいて、子どもの学区のために住民票を移すことを考えていたとします。
ただ、結婚していますと、配偶者と同じ戸籍にはいったままです。
そのため、住民票を移しますと、戸籍から今住んでいるところがどこか判明してしまいます。

そこで、配偶者に居場所がばれないようにするために、住民票の写し等の交付等を制限を役所にすることができます。

総務省の次のページに、手続の流れが記載されております。

住民票の交付等の制限は絶対ではない

住民票の交付等の制限をしても、配偶者が弁護士を通じて住民票の交付を請求してくることがあります。
そして、役所によっては、住民票の交付等の制限をしていても、弁護士の請求に対して開示してしまうことがあります。
その結果、配偶者に対して住民票上の情報が明らかになることがあります。

ですので、住民票の交付等の制限は絶対ではありません。

次のニュースでも、閲覧制限をしているにもかかわらず、自治体のミスで漏洩が生じていると報道されております。

 しかし、漏えいは翌15年度に10件発生し、以降も後を絶たない。職員が加害者の代理人弁護士に住所を伝えてしまったり、住所が記載された税や児童手当に関する行政文書を誤って送付したりするなどのミスが目立つ

読売新聞

弁護士の活用のしどころ

住民票の交付等の制限は絶対ではないとしても、対処の仕方はあります。
弁護士と相談して、住民票の交付等の制限を利用しつつ、配偶者に居場所がばれないようにするためにどうしたら良いか、アドバイスをもらうと良いでしょう。

「SAVE ME」に登録をする

DVやストーカーの被害者を守るために、次のサイトに登録すると良いです。
ご自身の情報が全国の探偵に共有されて、被害を未然に防ぐ一助となります。

保護命令の申立て

配偶者などから暴力や脅迫行為があった場合に、裁判所に対して、保護命令の申立てを行うことが考えられます。
詳しくは、次のページに記載をしております。

このような場合に弁護士の活用をご検討ください。

配偶者からの暴力(DV)の被害者の相談先は、色々あります(配偶者暴力相談支援センター、警察署、区市町、各民間団体など)。

そのような中、弁護士に相談・依頼をする方は、他の相談先ではうまく解決に至らなかった場合や、弁護士に相談・依頼することを勧められた方もいらっしゃいます。

心に傷を負っているのに、弁護士に相談してきちんと聞いてくれるのだろうか、話すこと自体が恥ずかしいし苦痛なのに、大丈夫なのだろうかと不安な気持ちもあろうかと思います。

弁護士の対応は、相談者の方の話をしっかり聞き、相談者の方がさらに傷ついてしまわないよう、言葉を選んで、法的なアドバイスをいたします。

証拠をどう集めれば良いかなど悩まれることもあるかと思います。
状況を御説明下さい。証拠の集め方などをアドバイスします。

DVで身の危険を感じる場合には、役所やシェルターとの橋渡しのサポートもいたします。

そして、警察署に1人で赴いても、警察官にうまく状況を伝えられない場合もあろうかと思います。
弁護士が一緒に同行し、代わりに危険な事情などを的確にお伝えるします。また、弁護士が法的な視点でアドバイスをします。
依頼者の方と警察官との間に入って、警察署と連携しながら配偶者からの暴力(DV)に対応をしていきます。

依頼者の代理人として交渉・調停・裁判を行います
依頼者の代理人としDVをする配偶者に受任通知を送り、依頼者が直接やりとりをするのではなく弁護士が依頼者に代わって代理人として配偶者とやりとりをすることができます。
夫婦の仲直りをするのか、それとも離婚に向けて進むのか、弁護士を間に入れて話し合ってすすめていくことができます。

具体的場面①

家族について

20代の男性。妻とは20歳のときから5年交際して結婚。婚姻期間3年、1か月前から妻が実家にもどる、子供は2人有り。持ち家。公務員(警察官)。

状況(妻から離婚を申し立てられたが、夫は離婚するか迷っている)

妻から、給料が少なく副業をしろ、競馬などのギャンブルをしているのではないか、他に浮気相手がいるのではないかなどと強く責められました。

妻を愛していたので、職場の飲み会などの出費を切り詰めるなど節約をしていました。

しかし、妻が3人目の子供を妊娠した際、私は産み育てることを望んでいたのに、妻がもう離婚したいから堕ろすといって、堕胎してしまいました。

そのため、妻を1回軽くはたいたところ、妻が子供達を連れて実家にかえっていきました。

その後、妻から、家庭裁判所に、婚姻費用分担申立、夫婦関係調整(離婚)申立がなされて調停となりました。

弁護士に依頼した結果

当初は、離婚を前提で話し合い、当分の間別居をして婚姻費用を月々6万ずつ払い、子供は妻が看護養育することとなっておりました。

しかし、夫としては妻とやり直したいと考えていました。ただ、夫は自分の思いを上手く伝えることができませんでしたし、妻側が夫との直接の話し合いを拒否していました。 そこで、代理人として、調停の場において、夫が妻を愛していること、仕事が激務であること、職場の付き合いがあることなどを訴えかけました。

そうしたところ、妻が関係をやり直したいと述べ、一緒に同居をすることになり、調停は終了しました。

弁護士としての見解

妻から心ないことを言われた、暴力を振るわれた、そのためもう離婚しなくてはいけないのかと考える夫のお気持ちは分かります。

しかし、夫婦がお互いにしっかり時間をかけて話し合えば、相手のこれまでみえなかった事情がみえてきて、相手に対する理解がより一層深まることがあります。
離婚調停の場を通じて、しっかり話すこともできます。

弁護士は、交渉のプロですし、依頼者の方の気持ちをくみ取って上手に相手に伝えることができます。

具体的場面②

家族について

夫婦共に30代。夫とは20代前半のときに結婚。子供が5人いる。夫は正社員として働いていて、自分はアルバイトの掛け持ち。婚姻期間20年近く。

状況

20代前半の時にアルバイト先で出会って結婚。5人の子供に恵まれました。

当初は仲睦まじかったが、夫が次第に言葉により罵ってきました。
例えば、だらしないとか、家事ができないとか言われたり、挙げ句の果てには子供に対してまで夫から暴言を吐かれました。

そのため、妻はうつになりましたが、それでも夫は罵ることを止めなかっため、離婚の話になりました。
そして、離婚の話をしている最中、夫が無理な要求を言ってきたため、妻は包丁を取り出し夫に向けたところ、警察に通報されて逮捕されました。

弁護士に依頼した結果

妻は初犯でしたので、警察署からはすぐに釈放されました。
その後、実家に身を寄せ、家族の協力もあり、不起訴処分となりました。

夫とはもはや直接話し合いをできる状況になく、そのまま別居状態が続きました。
もっとも、子供達のことを考えて離婚をすることは踏みとどまっていました。そして、このままではなにも進まないので、弁護士に依頼をして調停の場で今後の夫婦間についてや子供達のことをどうするか等について話し合いをしました。
調停で夫側と話し合い、円満に解決しました。

弁護士の見解

夫に言葉の暴力を伝えても、なかなか直らず、エスカレートしてくる場合もあります。 このような場合は、もはや直接夫側と話し合おうとせずに、第三者を交えて話した方がいいです。弁護士は、調停員や裁判官などにうまく事情を伝えて適切な解決に導きます。

離婚したい場合に解決にかかる時間

他の理由で離婚する場合と基本的には一緒です。

協議の場合は2~3ヶ月ほどで終わる場合もあります。

離婚調停になれば、数ヶ月かかるでしょう。
夫と妻の間の意見の隔たりが大きく、話し合いの余地がなければ早く終わることもあります。
話し合いの余地がないのならば、、裁判所は、離婚の調停は不成立とさせるでしょう。そして、婚姻費用の判断だけをするでしょう。
早ければ、2回目の調停で終わる場合もあります。だいたい、3か月くらいです。

モラハラのみの場合で、配偶者が離婚したくないのでモラハラの事実を認めていない場合、もっと時間がかかる可能性があります。
離婚調停だけでは終わらず、その後の離婚裁判になるでしょう。さらに数ヶ月かかる可能性があります。
裁判で、離婚原因としてモラハラがあったか、証拠はあったのかとなると、離婚が認められない場合もあります。

離婚したい場合は、証拠はきちんと確保しておくことです。

離婚・男女問題に関するブログはこちらです

参考になることや有益なことを意識して書いております。
良かったらお読みください。

DV・モラハラに関するブログはこちらです

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この記事を書いた人

弁護士水谷真実

弁護士水谷真実

東京の新宿駅の近くの新大久保で、弁護士事務所開業。弁護士10年目を超えました。離婚事件、一般民事事件、新大久保近辺に住む方々の事件、外国人の事件。ブログは主に離婚や男女問題について書きます。
ご相談いただいたことは、一生懸命対応します。悩んだら、思い切ってお問い合わせ・ご相談ください。

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