台風などの災害を受けた方へ(支援制度などについて)

離婚・男女問題に取り組む弁護士の水谷真実(@41bengo)です。

台風などの災害では、公的支援制度としてどういう支援が受けられるか、隣の人などとの紛争をどのように解決するか(相隣紛争)、建物が一部もしくは全部損壊した場合の認定をうまく行いたいなどの悩みが多いです。

そこで、 台風などの災害をうけた際に、どういうサポートが受けられるか、どういう法律が問題となるかなどを書きます。

災害時の弁護士の役割

災害時の相談においては、法的な解決をズバッとだすよりは、相談者の方に寄り添ってお話をお聞きすることを心がけております。

相談者の方は、災害に直面して不安な気持ちになっています。
そこで、窮状をきき、不安を解消するように努めております。

また、災害時における相談においては、情報を提供することも心がけております。
災害時にどういう救済方法があるのか、被災者支援としてどういう制度等があるかと伝えていきます。

次のようなお悩みを抱いたら、相談してほしいです。

  • 不動産の所有権や賃貸借
  • 車・船などの所有権
  • 工作物責任や相隣関係
  • 住宅・車・事業資金のローンなどの問題
  • 債権の回収
  • 離婚問題
  • 遺言・相続
  • 労働問題

災害時に多い相談

  • 住居や不動産
  • 家族や親族
  • 損害賠償
  • 日常の取引の問題

が多いです。

借家の修繕について

災害により、借家のかべにひび割れなどが生じた場合の修繕費は、だれが負担するでしょうか。

(賃貸物の修繕等)
民法606条
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。

民法

と規定されております。
そこで、賃貸人が修繕をすることになります。
ただ、賃貸人が、自分には修繕する義務はないといって拒否する場合もあります。

この場合には、賃料の支払を一部か全部拒否して、相殺をすることが考えられます。

旅行のキャンセル

例えば、台風がくるので、旅行会社のツアーを事前にキャンセルしたい場合があります。
この場合、キャンセルできたとして、キャンセル料はかかるのでしょうか。

目安となる約款があります。
国土交通省の標準旅行業約款です。この約款には、災害によるキャンセル料について、次の様に規定されています。

(旅行者の解除権)
第十六条
2 旅行者は、次に掲げる場合において、前項の規定にかかわらず、旅行開始前に取消料を支払うことなく募集型企画旅行契約を解除することができます。
天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の事由が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき。

国土交通省

この国土交通省の約款を元にして、旅行会社は独自の約款を定めています。

そこで、台風などの災害でキャンセルしたい場合、上記の約款の存在を主張して、キャンセル料無しでキャンセルしたい旨を伝えると良いでしょう。

1番良いのは、旅行に申し込むときに、旅行会社の人に、災害の時のキャンセルについて事前に確認をしておくことですね。

保険の確認と利用

台風で被害が発生した場合、自分が加入している保険(地震保険や火災保険など)を確認しましょう。

「火災保険」については、内容を確認しましょう。
火災保険の内容が水災についても補償していれば、台風によって建物や家財などへの被害の補償も受けられます。

保険金の支給をうけるためには、損害判定が必要です。
損害の程度により、支払われる保険金が異なります。

台風で被害をうけた場合は、きちんと被害の写真を撮影しておきましょう。

相手に保険の利用を促す

例えば、隣の家の屋根が飛んできて、自宅の屋根が傷ついたとします。
そこで、損害賠償請求をしたいと考えます。

しかし、裁判では、台風などが原因の場合、「不可抗力」なので責任がないとされかねません。

そこで、保険の利用が考えられます。
相手に、保険を利用して修理して下さいと伝えましょう。
なお、相手が保険の利用をしたくない場合、ごまかしたりする場合も考えられます。
きちんと相手から加入している保険会社をきいて、保険会社の人と話し合ってみましょう。

うまくいかない場合は、次の災害時ADRを利用したり、弁護士を代理人にして交渉をすることが考えられます。

災害時ADR の利用(弁護士の役割)

弁護士が間にはいって話し合いを行い、トラブルの早期の円満解決を目指すものです。
災害時ADRは、災害時に臨時にもうけられる制度です。

調停との違いですが、調停は裁判所が間に入ります。
災害時ADRは、弁護士会(弁護士)が間にはいります。

災害時ADRは、弁護士会にもよるかと思いますが、しっかりとしたサポートをうけられるはずですので、利用を積極的に検討してみましょう。

台風等で近隣から物が落ちてきたりブロック塀が崩れてきたりした場合

災害により、例えば、

  • 隣の家のブロック塀が崩れ落ちて家のかべが傷ついた
  • 隣の家の屋根が飛んできて、自分の家の屋根瓦が壊れた
  • 災害を契機に勤務先の会社から突然解雇された

ということがおこる場合があります。

災害を原因とする場合には、災害時ADRという裁判に寄らないで第三者が間にはいって話し合う手続がおすすめです。
0か100かの解決を図るというわけではありません。0か100かの解決だと、一方に不満が残る場合があるからです。

災害時に知っておくと良い知識ですね。

災害時ADRは、弁護士会の弁護士があいだに入って、お互いの話を聞いていきます。

解決にかかる期間ですが、申立てから解決までだいたい2か月くらいです。

災害における公的支援(特有の制度)

いろいろな特有の制度があります。
基本となる法律は、

  • 災害救助法
  • 被災者生活再建支援法

です。

災害救助法
被災者生活再建支援法

罹災証明書

災害で被害をうけた場合、市町村から罹災証明書を交付してもらいましょう。
罹災証明書は、各種の公的な支援をうけるための基本となる証明書です。

災害が原因の各種の支援制度の申請をするために、り災証明書の添付が求められます。
例えば、

  • 被災者生活再建支援金の支給
  • 災害復興住宅融資
  • 生活福祉資金の貸し付け
  • 義援金の配分
  • 住宅の応急処理
  • 応急仮設住宅への入居
  • 各種の授業料の減免
  • NHKの受信料の減免

などです。

罹災証明書とは、災害による家屋の被害の程度を証明する書面です。
だれが、どこで、どの程度被災したかを証明する書面です。

罹災証明書の発行をうけるためには、自主的な行動がまず必要となります。

「全壊」「大規模半壊」「床上浸水」など、被災の程度が判定されます。

【 災害時に知っておくと良い知識】
なお、罹災証明書で知っておくとよいことは、再調査依頼(=不服申立て)を求めることができる場合あるようです。これは、各市町村によって扱いがことなるかと思います。
罹災証明書は、災害下で発行されたり、復旧のために急ぎで発行する場合もあります。そこで、不満がある場合には、2次調査をして改めて罹災証明書を発行する場合もあるようです。

平成28年の熊本地震では、約6000件の再調査依頼(不服申立て)がありました。

罹災証明書を申請するための写真撮影の仕方

罹災証明書を発行するために、片付け前に事前に写真撮影をして証拠として残しておくと良いです。
片付け後だと、罹災証明の認定が低くなる傾向があります。

撮影のポイントについて、浸水などの水害にあった家屋について説明いたします。

(1)建物の全景を撮る
▼遠景で建物の4面を撮影します

(2)浸水した深さを撮る
▼メジャーを使って水が浸かった深さを測定
▼測定場所がわかるように遠景を撮影
▼メジャーの目盛りがわかるように近景も撮影

(3)被害箇所を撮る
▼被害箇所ごとに遠景と近景の2枚セットで撮る(被害箇所がわかるように指を差して撮るとよい)
▼主な被害箇所は、外壁/屋根・基礎・内壁・天井・床・ドア・ふすま・窓・キッチン・浴室・トイレなど

ウェザーニュース

詳しくは、
建物被害調査のトリセツ-かたづける前に記録を残そう-」( 「水害編」 )( 常葉大学附属社会災害研究センター )
を参照ください。

風害については、
「建物被害調査のトリセツ-かたづける前に記録を残そう-」( 「風害編」 )( 常葉大学附属社会災害研究センター )
をご参照ください。

罹災証明書について

災害救助法

災害救助法によると、現物の給付が原則となります。

お金は交付しないのです。
法律には記載がないのですが、行政が運用でこのようにしているのです。


【災害時に知っておくと良い知識】
知ってほしいことは、台風などの災害の被害にあった地域に住んでいなくても、災害で被害にあった場合に適用されます。

救助の内容

1避難所の設置
2応急仮設住宅の供与
3炊き出しその他による食品の給与
4飲料水の供給
5被服、寝具その他生活必需品の給与・貸与
6医療・助産
7被災者の救出
8住宅の応急修理
9学用品の給与
10埋葬
11死体の捜索・処理
12障害物の除去

災害救助法の概要

があります。
上記の中で、8住宅の応急修理と12障害物の除去について、説明いたします。

住宅の応急修理

屋根や壁や柱などの住宅の大事な部分に損傷が生じた場合に、うけられる制度です。

①災害のため住家が半壊(焼)し、自らの資力では応急修理をすることができない者
②大規模な補修を行わなければ居住することが困難な程度に住家が半壊(焼)した者

災害救助法の概要(平成31年度版)

の場合に、1世帯当たり58万4000円まで支給されます(令和元年時点において)。

災害によって金額が増えるという訳ではなく、現状では一律上記の基準で扱われます。

なお、2019年9月の台風15号による災害を契機に、一部損壊の場合も支給が受けられることになったようです(産経新聞の記事より)。

台風などの場合、あとでカビがはえると修繕により費用がかかりがちです。
そこで、かぜが発生する前に早めに修繕しましょう。
また、積雪地帯の場合は、雪が降る前に修繕にとりかかると良いですね。

【賃貸の場合】
利用できます。
例えば、貸主が借家の修繕をしない場合に、借主がこの制度を利用することができます。

障害物の除去

災害により、家が土砂に覆われることがあります。

【ボランティア】
このような場合、ボランティアの人が対応することが多いようです。

そこで、早く土砂を撤去したい場合、自分からボランティアの人達に連絡をすると、早く対応してくれる場合があるようです。

【行政】
行政も行いますが、私有地には同意なく入ることはないです。
災害における行政の課題といえます。

【私有地の土砂の撤去】
土砂が流れ込んできたら、流入元の所有者に対して土砂の撤去を求められます。
なお、土砂がどこから流れ込んできたか分からない場合は、自分で撤去することになります。

【注意点】
土砂の撤去や住宅の修補などにお金をかければ、避難所や仮設住宅に住めません。どちらか一方しか選べないのです。
東日本大震災や熊本震災でもおきたことですので、気をつけることになります。

救助の程度

災害ごとに異なります。
災害がより大きくなると、救助の程度や救助期間が上乗せされていきます。

被災者生活再建支援法

災害救助法は基本的に現物が給付されましたが、被災者生活再建支援法は現金が支給される制度です。

内閣府によると、過去の災害の際には、申告せず現金の支給をうけていない人がけっこういたそうです。
ですので、忘れずに行いたい公的支援の1つです。


被災者生活再建支援法が適用されるのは、10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等です。

そして、対象となる世帯についてですが、

①住宅が「全壊」した世帯
②住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
③災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
④住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)

被災者生活再建支援制度の概要

となっております(令和元年において)。

上記の①から④の違いですが、

  • 支援金の支給額が異なる
  • 住宅の再建方法(建設・購入、補修、賃借)などによっても、支援金の支給額が異なる

などがあります。

災害弔慰金の支給・災害障害見舞金の支給

自然災害により親族が亡くなった場合に、災害弔慰金の支給を受けられます。

また、自然災害により重度の障害となった場合には、災害障害見舞金の支給を受けられます。

よくおこることですが、避難所に避難後、環境の変化などにより、持病が悪化して無くなった場合についてです。
災害関連死として、災害と死亡との間に関連があれば、災害弔慰金が支給されます。

自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン

ガイドラインであり、法律ではありません。
一般社団法人全国銀行協会が作成した、各金融機関がしたがう申し合わせのようなものです。

住宅ローンだけではなく、クレジットカードや自動車ローンにも利用できます。

このガイドラインを利用する場合、弁護士などの「登録支援専門家」による手続の支援を依頼する必要があります。
そして、「特定調停」という申立てをすることになります。

まこと法律事務所

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電話番号:03-6279-3177

この記事を書いた人

弁護士水谷真実

弁護士水谷真実

東京の新宿駅の近くの新大久保で、弁護士事務所開業。弁護士10年目の若手。離婚事件、一般民事事件、新大久保近辺に住む方々の事件、外国人の事件。ブログは主に仕事、その他気の向くままに。
ご相談いただいたことは、一生懸命対応します。アフターフォローにも力を入れています。来所が難しい方のために出張相談を承ります。悩んだら、思い切ってお問い合わせ・ご相談ください。

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