新宿区新大久保に事務所がある、相続の悩み解決のサポートにも注力している、弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。
遺言書の大切さについてです。
遺言書は、故人の最終的な意思を示されており、亡くなった後の財産分配などを示す文書です。
遺言書があれば、故人の生前の意思に基づいて遺産を分割することができます。
親が亡くなり、相続人である子供達で話し合って遺産分割をしたとしましょう。
しかし、その後になってから、子供の一人が実は親の遺言書を持っていました、という場合はどうなるでしょうか。
この場合は、故人の意思が反映されずに故人の遺産が遺産分割がなされているので、問題ですよね。
遺言書の破棄や隠匿をした者は、相続人となることができなくなるおそれがあります。
以下で具体的に説明していきます。
遺言書の破棄や隠匿についての民法の規定
民法では、遺言書の破棄や隠匿については次のように規定しています。
(相続人の欠格事由)
e-GOV法令検索民法
民法第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
遺言書の破棄や隠匿をした者は、相続人の欠格事由にあたり、相続人となることができない、と規定されています。
なお、この規定からは、具体的にどのような行為が破棄や隠匿になるかまでは明らかではありません。
そこで、争いがある事案では裁判所の判断が必要となります。
最高裁判所の考え
どのような場合に遺言書の破棄や隠匿があるかについて、現在でも考え方のもとになっている判例(最高裁判所第3小法廷 平成6年(オ)第804号 平成9年1月28日)をご紹介します。
事案
相続人の間で遺産分割協議がなされました。
遺産分割協議が成立した後になり、Aさんは、自身が保管していた被相続人の遺言書を他の相続人たちに初めて開示しました。
そのため、他の相続人たちは、Aさんが、遺言書の破棄や隠匿をしたとしたと述べました。
相続欠格事由があるのではないかということで争われました。
最高裁判所の考え
最高裁判所は、次のように考えを示しています。
相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法八九一条五号所定の相続欠格者には当たらないものと解するのが相当である
最高裁判所第3小法廷 平成6年(オ)第804号 平成9年1月28日
最高裁判所の考えは、二重の故意必要説です。
すなわち、遺言書を破棄や隠匿をする故意の他に、相続に関して不当な利益をえる目的も必要である、という内容です。
事案の帰結(Aさんはどうなったか)
上記の事案ですが、遺言書の内容は、Aさん側に遺産をわたす、という内容の遺言書でした。
Aさんに不利な内容の遺言書ではありませんでした。
そのため、Aさんが遺言書を破棄しや隠匿をしても、不当な利益をえる目的がないと判断できました。
そこで、Aさんには相続欠格事由はなく、相続人であると判断されました。
被相続人(故人)としてできたこと
遺言書を安全に保管していれば、遺言書の破棄・隠匿の問題は生じなかったでしょう。
そこで、
・公正証書を作成して公証役場で保管
・自筆証書遺言書保管制度の利用
・銀行の貸金庫に保管
・信託銀行を使用して保管
・弁護士や税理士などの専門家が保管
・遺言執行者が保管
などを利用して、相続後のトラブルが未然に防ぐことが考えられます。
最後に
遺言書は、亡くなった故人の意思が記載されている極めて重要な文章です。
そこで、遺言書をめぐってトラブルが生じる場合があることを念頭におく必要があります。
事前トラブルが生じないようにすることが本来一番です。
そこで遺言書の内容や保管について、安全性や確実性が保たれるようにするべきです。
万一亡くなった後に問題が生じたら、弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。
私も助言やサポートなどできます。気軽にご連絡、ご相談ください。