新宿区新大久保に事務所がある、弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。
錯誤についてです。
私生活上で、錯誤が問題になる時があります。特に、お金が絡むときに問題になることがあります。錯誤は、私生活上でも身近で重要な概念です。
以下では錯誤について説明をいたします。
錯誤は民法に規定されている
錯誤ですが、錯誤が認められる要件等について民法に規定されています。次のように規定されています。
(錯誤)
e-GOV法令検索民法
民法第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
ずいぶんと長い規定ですね。以下では、この民法の錯誤の規定について、どのような種類があるのか、それぞれの種類についての要件や具体例などについて説明をしていきます。
錯誤の種類について
錯誤ですが、大きく2つの種類があります。先ほどの民法の規定に基づくと、大きく2つの種類に分かれます。
①表示行為の錯誤(意思表示の錯誤)
②動機の錯誤
です。
表示行為の錯誤(意思表示の錯誤)
表示行為の錯誤ですが、意思表示に対応する意思を欠く錯誤をいいます。
そして、具体的には表示上の錯誤と表示行為の意味の錯誤があります。
表示上の錯誤について
例えば、味噌ラーメンを頼むつもりで、醤油ラーメンをくださいと言って注文してしまった場合が考えられます。
また、マンションの部屋を購入しようとして、2000万で購入しようとしたのに、一桁間違って2億円で購入すると書面に記載することが考えられます。
要するに、言い間違いや書き間違いのことですね。
言い間違いや書き間違いなどの場合なので、どのような場面か思い浮かべることが容易だと思います。
表示行為の意味の錯誤について
表示行為の意味の錯誤ですが、表意者が言い間違わずにきちんと意思表示をしたのですが、その意味を誤解したり、勘違いしたために表示した内容と内心との間に食い違いが生じた場合を言います。
例えば、Xさんは味噌ラーメンを頼むつもりで味噌ラーメンをくださいと言いました。言い間違ってありません。しかし、 X さんは塩ラーメンのことを味噌ラーメンだと思っていたのです。
要件について
①錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき(民法95条1項)
②意思表示をした人に重過失がないこと(民法95条3項)
動機の錯誤について
動機の錯誤とは、表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤をいいます。
例えば、マンションの部屋を買う場合についてです。
近くに新しい鉄道の駅ができるという理由(この部分が動機の部分です)で、マンションの部屋を購入しました。
しかし、鉄道の駅はできませんでした。
そこで、動機に錯誤があったとして、契約の取り消しの主張がなされる場合があります。これが動機の錯誤です。
裁判では、こちらの動機の錯誤が問題になることが多いです。
過去の裁判例でも、動機の錯誤が問題になって争われることが多いです。
要件
①錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき(民法95条1項)
②意思表示をした人に重過失がないこと(民法95条3項)
③その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたとき(民法95条2項)
①についてです。
端的にいいますと、錯誤があまり重要なものではない場合には、錯誤とならないということです。
③についてです。
マンションの部屋を購入する際に、近くに新しい鉄道の駅ができるという理由、すなわち動機が売主側に表示されていれば、③に該当する可能性があります。
錯誤の取り消しを主張できる期間
錯誤ですが、取り消しを主張できる期間が決まっています。民法に規定されています。
5年と20年にわかれていますね。
(取消権の期間の制限)
e-GOV法令検索民法
民法第百二十六条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
最後に
錯誤は、意外かもしれませんが身近な事柄です。錯誤かな?と思ったり、相手が錯誤を主張してきたら、弁護士さんに相談してみてください。
弊事務所でも、相談できます。電話やメールなどでお気軽にご連絡ください。