
新宿区新大久保に事務所がある、弁護士の水谷真実です。
配当収入もある場合に、婚姻費用がいくらになるかについて、以下で説明をいたします。
婚姻費用(いわゆる生活費)の算定は、夫婦が別居している間にどれだけの金額を支払うべきかを決める重要な基礎となります。
このとき、給与だけでなく「配当(株式配当・利子など)」の収入がある場合の取り扱いが問題になることがあります。
多くの方が考えるように「単純に給与+配当を合算すればよい」というわけではありません。
そもそも婚姻費用の算定表は、「会社員の給料」を基準に作成されているからです。
婚姻費用で使う「収入」って何?
婚姻費用の算定では、裁判所が作成した「算定表」(婚姻費用算定表)を使うことが一般的です。
この算定表は、収入のうち
① 実際に使えるお金(基礎収入)
をもとに金額が計算されます。
基礎収入は、
・総収入(給与・事業・配当など)
から
・公租公課(税金)
・職業費(仕事するために必要な費用)
・特別経費
を差し引いて算出されます。
ただし、配当は職業費がかからない性質の収入です。
給与収入の場合は、通勤費や仕事に必要な出費がかかります。そのため、婚姻費用の計算では一定の割合が差し引かれます。
一方、株の配当は、株を保有しているだけで得られる収入です。通勤費などの「仕事経費」は基本的にかかりません。
そのため、給与と同じように扱ってよいのかが問題になるのです。
配当がある場合の婚姻費用計算のポイント
実務上では、以下のような方法が検討されます。
配当の基礎収入割合を調整する方法
配当は職業費不要であるため、給与所得者に比べて基礎収入割合が高くなるように調整します。
具体的には、給与基礎収入割合に一定の加算をする方法です。
配当を「給与扱い」にして計算する方法
配当額を一定の係数で給与収入に換算した上で、算定表の基礎収入割合を用いて計算する考え方です。
配当収入を給与所得と同様に取り扱い、給与所得者に対応する基礎収入割合を乗じて基礎収入額を求めます。
基礎収入割合を幅でとらえる方法
配当収入について、公租公課等のみを控除した場合に想定される基礎収入割合(例:50%〜60%)の範囲を設定し、その範囲内の係数を配当収入に乗じて基礎収入を算出する方法です。
こうして算出した配当部分の基礎収入に、給与収入についての基礎収入を加算し、全体の基礎収入額とします。
どの方法を使う?
どの計算方法を必ず使うべきか裁判所で統一された扱いはありません。
そのため、
- ご自身の収入構造に最も有利な算定方法を選ぶ
- 相手方との交渉でその計算方法を用いる理由を説明する
- 弁護士が代理人として主張・立証する
ことが必要になります。
まとめ
| 項目 | 取扱いのポイント |
| 給与所得 | 通常の算定表通りの扱い |
| 配当所得 | 職業費不要 ⇒ その特性を踏まえた扱いが必要 |
| 算定方法 | ケースに応じて3種類の計算方法が検討される |
弁護士からのワンポイントアドバイス
配当収入があるときの婚姻費用の算定は、どの方法を使うかによって受け取れる金額が変わる可能性があります。
単に収入を足し合わせるだけではなく、収入の性質に応じた算定が必要です。

配偶者には、給与所得以外に配当所得もあるのだから、婚姻費用(生活費)は妥当な納得した金額を支払いたい、という思われる方がいらっしゃいます。
納得して婚姻費用を支払うためにも、配当所得にも目を配って、相手に主張して納得した金額を支払いたいものです。
