新型コロナウィルスの影響で緊急事態宣言がでています。
そのため、結婚式と披露宴をキャンセルしたいのです。
式場に連絡をしたら、私達の都合によるキャンセルだとして、キャンセル料として60万円請求されました。
どうしたらよいでしょうか?
今、問題となっていますよね。テレビとかでも放送されていますね。
基本は支払う必要はないです。
具体的に考えましょう。
規約に基づいてキャンセル料を支払う義務はある?
結婚式のキャンセルの場合、式場側は約款に基づいてキャンセル料の支払いを求めてくる場合が多いです。
約款ですが、約款の内容が新郎新婦にとって一方的に不利益な内容とならない限り、約款の内容に合意したと見なされます。
(定型約款の合意)
e-Gov
民法第548条の2 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
そして、式場側の約款には、
「既にご契約された挙式・披露宴をお客さまの都合により、お取り消しになる場合は、以下の解約料金を頂戴いたします。」
と記載されていることがあります。
式場側は、私達の都合によりキャンセルされたのだから、キャンセル料を支払って下さいと言ってきています。
新型コロナウィルスで緊急事態宣言がでている場合は、「お客様の都合により」と言えるのでしょうか?
結婚式や披露宴は、親しい人などが集まって新郎新婦の新しい門出を祝い、お祝いの言葉を述べるなどして華やかなムードの中で行われるものです。
出席する人達の間で、いろいろな会話がなされますし、一緒に写真をとるために近くに寄ったりもします。
また、結婚式・披露宴に出席するために、遠くから飛行機や列車でかけつけてくれる人達もおります。
そして、以前から3密(密閉空間を避ける、密集場所を避ける、密接を避ける)を避けるよう要請されております。さらに、緊急事態宣言により、外出自粛やイベントの開催自粛が求められております。
そのため、3密と緊急事態宣言下に反することなく結婚式・披露宴を行うことは不可能です。
そうしますと、「お客様の都合により」とはいえなくなり、規約違反にはなりませんね。
そのため、規約に基づくキャンセル料は発生しないです。
そうなんですね。私が悪いわけではないということが分かって良かったです。
えぇ、新型コロナウィルスで仕方ないことですよね。
消費者契約法9条との関係
結婚式のキャンセル料について、消費者契約法9条が問題となるとインターネットで読みました。
この点はどうなのでしょうか?
消費者契約法9条について解説しているホームページがありますね。
考えてみましょう。
消費者契約法9条ですが、規約や契約書の条項等で損害賠償の規定が定められている場合について規律する条文です。
次の様に規定されております。
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
e-Gov
消費者契約法第9条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
規約で、キャンセル料について定めていても、その金額のうち、「平均的な損害」の額を超える部分は、消費者契約法により無効となることを消費者契約法9条は定めています。
今回は、規約に基づくキャンセル料が発生しません。
ですので、そもそも消費者契約法9条が問題となる場面ではないですね。
そうなんですね。
分かりました。
履行不能に基づく損害賠償の支払義務はある?
民法では、債務不履行で履行が不能になった場合に、損害賠償を支払うという規定があります。
(債務不履行による損害賠償)
e-Gov
民法第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
新型コロナウィルスに基づく3密を避ける要請や緊急事態宣言からして、債務者である新郎新婦側には結婚式のキャンセルについて責任はないですね。
そこで、民法415条の履行不能に基づく損害賠償義務もありません。
良かったです。
結婚式・披露宴が緊急事態宣言解除後に予定されていたら?
結婚式と披露宴が、緊急事態宣言解除後の8月に予定されていたらどうなるんでしょうか?
式場側は、8月は営業しているのにキャンセルするのは、新郎新婦側の自己都合だと主張してきますよね。
そうですね。
どうなるか考えてみましょう。
緊急事態宣言が解除された後ですと、緊急事態宣言を理由とすることはできません。
ただ、依然として3密を避けることは続いているはずです。
結婚式・披露宴を行って、新型コロナウィルスの感染者がでたら大変ですよね。
話し合いがつかなかったら、最終的には裁判となります。
ただ、キャンセル料の金額がそれほど大きくない場合は、裁判は現実ではありませんね。
式場側と話し合いをして、着地点を見いだせればそれに越したことはありません。
キャンセル料をさらに折半するということも考えられます。
例えば、キャンセル料が50万円だったら、25万ずつ式場側と新郎新婦側で負担するという解決策です。
最後に
結婚式をあげて幸せいっぱいの気持ちになるはずなのに、キャンセル料の話し合いをしなくてはならないのは、嫌なことですね。
式場側とは、結婚式のキャンセルではなく延期の方向で話し合うとか、お互いに納得できる解決策を見いだせれば良いですね。
もし、どうしてもキャンセルをしなくてはならないのならず、式場側と折り合いがつかない場合は、弁護士に状況を説明して法的なアドバイスをもらいましょう。