離婚裁判で判断されること・されないこと——被告になった場合を中心に

弁護士水谷真実
弁護士水谷

新宿区新大久保に事務所がある、離婚男女問題で悩まれている方のサポートに力をいれている、弁護士の水谷真実です(→プロフィールはこちらです)。

離婚裁判になると、「とにかく自分の言いたいことを全部ぶつければいい」と思われる方がいらっしゃいます。
気持ちはよく分かります。しかし、裁判というのは、何でも話し合える場ではありません。
判断される事柄と、そうでない事柄があるのです。この点を最初に知っておくだけで、裁判への向き合い方がずいぶん変わってきます。

裁判所が判断するのは「請求の趣旨」だけ

訴える側(原告)は、裁判所に訴状を提出します。訴状の1ページ目には「請求の趣旨」という欄があります。

ここに書かれるのは、たとえばこういった内容です。

  • 離婚を認めてください
  • 財産分与として○○円を支払ってください
  • 慰謝料として○○円を支払ってください

裁判所が判断するのは、この請求の趣旨に書かれたことだけです。

たとえば原告が「離婚してください」とだけ書いたとします。その場合、裁判所が判断するのは「離婚を認めるかどうか」のみです。財産分与については、請求の趣旨に書かれていなければ、裁判所は判断しません。

これは一見すると「そんなもの?」と思われるかもしれませんが、実はとても大切な原則です。

なお、訴状の請求の趣旨に書かれていなくても、被告が別途「附帯処分の申立て」として財産分与を求めることができます。

手続き根拠内容
附帯処分の申立て人事訴訟法32条1項原告・被告どちらでも、財産分与・子の監護に関する処分を離婚訴訟と同じ手続きの中で申し立てることができる

被告として自分の主張をしたいとき——「反訴」という手段

では、訴えられた側(被告)はどうすればいいのでしょうか。

たとえばこういうケースを考えてみます。妻から離婚を求められた夫。しかし夫は、別居中に妻から暴力やモラハラを受けていて、慰謝料を請求したいと思っている。

このとき、ただ口頭で「自分だって被害者だ」と主張しても、裁判所はそれを金銭請求として判断してくれるわけではありません。請求の趣旨に書かれていないからです。

こういった場合、夫としては「反訴(はんそ)」という手続きを使います。反訴とは、被告が逆に原告を訴える手続きです。夫が反訴を起こして「慰謝料○○円を支払え」と請求の趣旨に書いて初めて、裁判所がその点を判断してくれるようになります。

裁判の外で解決することが適した場合もある

もう一つ、実際によくあるケースを紹介したいと思います。

別居中の妻が離婚を求めて提訴したとします。夫としては、妻が持っていってしまった自分の荷物や大切なものを返してほしいと思っている。

ところが、訴状の請求の趣旨にはそんなことは書かれていません。裁判所は荷物を返すかどうかを審理しないということです。

ではどうするか。こういった場合は、反訴において動産の引渡し請求もかんがえられますが、裁判の手続きとは別に、弁護士同士のやり取りの中でお願いベースで交渉していくことになります。「弁護士を通じて相手に伝える」という手段です。ただし、あくまでもお願いベースですので、相手が応じなくても、それ自体をすぐに強制することはできません。

相手が答えてくれないのはなぜか

裁判や交渉の中で、「相手に伝えたのに返答がない」という経験をされる方は少なくありません。これについても少し触れておきたいと思います。

返答がない理由はいろいろあります。裁判の審理の対象外だから弁護士が対応しない、という場合もあります。あるいは、戦略的にあえて答えない、ということもあります。「無視されている」「誠実じゃない」と感じる気持ちはよく分かりますが、必ずしもそういうわけではない場合も多いのです。

裁判の場では、判断される事柄と判断されない事柄がある。それに応じて相手の対応も変わってくる。 この感覚を持っておくことが、裁判を乗り越えていくうえで大切だと思っています。

分からないことがあれば、ぜひ担当の弁護士に遠慮なく確認してみてください。

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この記事を書いた人

弁護士水谷真実

弁護士水谷真実

東京の新宿駅の近くの新大久保で、弁護士事務所開業。弁護士10年目を超えました。離婚事件、一般民事事件、新大久保近辺に住む方々の事件、外国人の事件。ブログは主に離婚や男女問題について書きます。
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