既婚者との間で婚約が成立するための法律構成を示します

既婚者との間で婚姻予約が成立して、婚約破棄に基づく損害賠償請求ができるのでしょうか。
法律(民法)は、重婚を禁止しています。

(重婚の禁止)
第732条
配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

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既婚者の離婚を条件とする停止条件付きの婚約となるのか、公序良俗に反して無効とならないのか。
どのように法律構成をするべきについて、過去の判例が参考になります。
過去の判例を挙げて、説明をいたします。
以下の2つの判例は、なにか一般的な基準を示しているわけではなく、婚約破棄についての事例判断です。

過去の裁判例

裁判例

裁判例(大阪地方裁判所 昭和49年(ワ)第2859号 慰藉料請求事件 昭和52年6月24日)では、次の様に述べられております。

裁判例の基準

原告請求原因(一)の事実は当事者間に争いがなく、《証拠略》によると、被告は昭和九年頃訴外花子と婚姻し、その間に長女咲子長男一郎をもうけたが、花子とは昭和三三年八月頃から別居をしていたこと、被告花子は協議離婚をすることに異議がなかったが、離婚が子供達の結婚や就職の障害になるとして子供達が結婚や就職をすませた後にその届出をすることに合意していたこと、妻花子は昭和四〇年九月七日付で「私は貴方との協議離婚届は昭和四二年四月には必ず致します。これは咲子の結婚と一郎の就職問題もありますのでそれ迄待ってもらいたいのです。右期日が到来したら必ず協議離婚届に署名捺印致します。後日の為本念証を差入れます」と書きその母親らと共に署名捺印した念証を作成し、別に協議離婚届に署名捺印してこれらを被告に交付していたこと、被告は見合いの後右の離婚届を原告に呈示したことが認められる(《証拠判断略》)ので、当時被告に法律上の妻があったとはいえ、原被告の本件婚姻予約は公序良俗に違反せず、予約の破棄が正当な事由に基くものでないときは、双方はこれによって生じた損害の賠償を求めることができるというべきである。

既婚者とその妻との間の状況を鑑みて、既婚者との婚姻予約が公序良俗に反しないかどうか判断することになります。

婚約が法的保護に値するために

上記の裁判例では、次の様に事実認定しています。

「私は貴方との協議離婚届は昭和四二年四月には必ず致します。これは咲子の結婚と一郎の就職問題もありますのでそれ迄待ってもらいたいのです。右期日が到来したら必ず協議離婚届に署名捺印致します。後日の為本念証を差入れます」と書きその母親らと共に署名捺印した念証を作成し、別に協議離婚届に署名捺印してこれらを被告に交付していたこと、被告は見合いの後右の離婚届を原告に呈示したことが認められる(《証拠判断略》)ので、当時被告に法律上の妻があったとはいえ、原被告の本件婚姻予約は公序良俗に違反せず、予約の破棄が正当な事由に基くものでないときは、双方はこれによって生じた損害の賠償を求めることができるというべきである。

協議離婚届に署名捺印しているなどの状況から、婚約が法的保護に値する場合があると判断しています。

裁判例

裁判例(名古屋高等裁判所 昭和58年(ネ)第662号 損害賠償請求控訴事件 昭和59年1月19日)では、次の様に事実認定しています。

ところで、本件においては、控訴人が被控訴人と情交関係を持つた当時、控訴人とその妻ハナ子との間が事実上離婚状態にあつたと認むべき資料はなく、したがつて、控訴人と被控訴人との関係は善良の風俗に反するものとして、その存続を法的保護の対象とはなしえない筋合いであるから、右両名の離別を、婚姻予約の不履行ないし内縁関係の不当破棄そのものとして構成することは許されないというべきである。

最後に

以上の判例は、事例判断の裁判例です。
そして、婚約破棄が認められるために前提となる、配偶者との間の婚約関係が破綻をしていたかについて判断をしています。

一定の要件の下で保護に値するかを判断しています。

既婚者が配偶者との間で事実上離婚状態にあれば、既婚者との間の婚約は公序良俗に反せず認められることになります。

ですので、裁判では、既婚者が配偶者との間で事実上離婚状態あることの具体的の主張立証が必要です。

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この記事を書いた人

弁護士水谷真実

弁護士水谷真実

東京の新宿駅の近くの新大久保で、弁護士事務所開業。弁護士10年目を超えました。離婚事件、一般民事事件、新大久保近辺に住む方々の事件、外国人の事件。ブログは主に離婚や男女問題について書きます。
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