店舗の立ち退き交渉などに取り組む弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。
お店の一区画を借りて、その一区画を店舗として営業していました。
しかし、貸してくれた人が本当の賃貸人ではなく、他に賃貸人がいる場合が判明しました。
そして、その賃貸人から、無断転貸だとして明渡しを求められました。
転貸人に対して賃料を拒否したいです。
また、お店の営業を続けることができるでしょうか?
賃貸人と転貸人(賃借人)の関係
まず、賃貸人と転貸人(賃借人)との関係を考えてみます。
賃貸人が転貸人(賃借人)に対して無断転貸を理由に賃貸借契約を解除できなければ、転借人は建物を利用し続けることができます。
ここで、賃貸借契約の場合、信頼関係が破壊されているかがポイントになります。
そして、無断転貸借の場合は、次の最高裁の判例が参考になります。
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用・収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足らない特段の事情のあるときは、賃貸人は民法612条2項により契約を解除することができない。
最高裁昭和28年9月25日判決
背信行為と認めるに足りない特段の事情とは、具体的には、同居の親族への譲渡などで、利用する人が変わっていないといえるような場合に限られます。
そのため、無断転貸の転借人としては、基本的には賃貸人に対して建物を明け渡す必要が生じます。
転借人と転貸人との関係:賃料の支払を拒否
賃貸人が賃借人(転貸人)との賃貸借契約の解除を理由に転借人に建物明渡を求めた場合には、転借人は転貸人に対して、賃料の支払の拒否ができます。
過去の判例でも認められています。
ただ、賃料支払を拒否したからといって、賃料の支払が免れるわけではありません。
賃貸人に対して支払う場合もありますので、無駄遣いせずに賃料分はきちんととっておきましょう。
弁護士の活用のしどころ~転借人の立場から~
転借人としては、賃貸人と賃借人(転貸人)の両方を相手にしなくてはなりません。
そこで、弁護士をとおして、双方と交渉をする方法が考えられます。
感情的になりがちな状況ですので、弁護士を通して冷静に話し合い、自分の主張などを弁護士を通して伝えることが考えられます。
また、転貸借の場面は、判例などもけっこうあり、判例などを踏まえてどう対応するのが良いのかなども弁護士ならアドバイスができます。
裁判になった場合
賃貸人が賃借人(転貸人)と転借人を両方訴えてくる場合があります。
この場合、裁判を分離して、賃貸人と転借人だけで個別に裁判をすることも可能です。
一方、みんな一緒に同じ裁判で審理をすることもできます。
弁護士の活用のしどころ~転借人の立場から~
裁判を分離するか、しないで一緒にやっていくかは、将来を見据えた判断が必要です。
また、賃貸人や賃借人(転貸人)などの心情をふまえて、法的な主張立証をしていきます。
裁判になったら、弁護士に積極的に相談すると良いですね。