はじめに
結婚は人生の大きな節目ですが、同時に法的な財産関係も大きく変わる重要な局面でもあります。
特に、結婚前から築いてきた預貯金や、ご両親から受け継いだ財産をお持ちの方にとって、「万一の場合にこれらの財産はどうなるのか」という不安は自然なものです。
離婚を考えている、または離婚の話し合いが始まっている方で、結婚前から持っていた預貯金や、両親から受け継いだ財産はどうなるのだろうか。「これらの財産は財産分与の対象になってしまうのか」「どうすれば自分の財産を守れるのか」という不安を抱えている方もいます。
そこで、基本的な考え方について、ご説明いたします。
「特有財産」という概念について
結婚前からお持ちの預貯金は、法律上「特有財産」として扱われる可能性があります。
特有財産とは、夫婦が結婚後に協力して築き上げた「共有財産」とは区別される、個人固有の財産を指します。
この特有財産は、万一離婚となった場合に、財産分与の対象から除外される可能性があります。
そのためには、一定の要件を満たす必要があります。
特有財産として認められるためのポイント
財産分与基準日に存在していることが前提
財産分与の基準日(通常は別居時点)において、その預貯金が実際に残っていることが必要です。
結婚前の預貯金であっても、結婚後の生活費や家計に使用してしまい、基準日に残高がない場合は、特有財産として主張することは困難になります。
明確な証明資料の準備と保管
特有財産であることを証明するためには、以下のような資料が必要となります:
・婚姻時点での残高の証明
→結婚した時点での預金残高を示す通帳のコピーや残高証明書
・その原資の裏付け資料
→独身時代の給与明細や源泉徴収票 、貯蓄の履歴を示す資料 、ご両親からの贈与の記録(贈与契約書、振込記録等) 、相続による取得の場合は相続関係書類
これらの資料は、しっかり保管し、いつでも提出できる状態にしておくことが大切です。
再発行しようにも、できない場合があるからです。
他の財産との混同を避けるための管理
結婚後は、結婚前からの預貯金と結婚後の収入等を別々に管理することが重要です。
同一の口座で混同してしまうと、どの部分が結婚前からの財産なのかを特定することが困難になります。
特有財産としての主張が弱くなる可能性があります。
実際の法的手続きにおける注意点
上記のような対策を講じていても、実際の離婚調停や訴訟では、相手方から様々な反論がなされることが想定されます。
例えば、
・「その預貯金は夫婦の共同生活のために使われた」
・「結婚後の家計管理において実質的に共有財産化した」
・「証明資料の信憑性に疑問がある」
このようなことに対応するためには、弁護士等に相談すると良いです。
最後に
本ブログで説明した内容は、一般的な側面があります。実際の財産保護策については、個々の具体的な状況を詳細に検討した上で、適切な法的手続きや予防策を講じる必要があります。
真摯に離婚後の財産保護について考えておられる方や、専門的なアドバイスを求めて実際のご相談をお考えの方は、当事務所までご相談ください。
ご相談の際は、上記で触れた関連資料をできる限りお持ちいただけますと、より具体的で実践的なアドバイスをご提供することができます。