80歳90歳を過ぎてくると、認知機能に問題を抱える方もいらっしゃいます。
そのような、認知能力が弱っている高齢者の弱みにつけ込み、詐欺まがいのやり方で違法・不当な契約をする業者がいます。
そこで、高齢者が詐欺にあわないための事前の準備について、書きます。
なにも、難しいことではありません。
自己紹介ですが、高齢者の詐欺被害の未然防止に取り組む、弁護士の水谷真実(→プロフィールはこちら)です。
事前の対策
電話機が留守電になるようにする
家の固定電話を留守電にするだけでも、詐欺の被害を防ぐことができます。
詐欺グループの話ですが、電話をかけた先が留守電になると、嫌がるのですよ。
警察署で刑事さんと話すと、詐欺グループの場合は家の固定電話が留守電になるだけでも嫌がるとのことです。
詐欺対策用の電話機にする
詐欺を行う不動産業者などは、まず、家の固定電話をかけてきてアポイントをとろうとすることがあります。
この場合、電話機が普通の電話機だと、詐欺の業者を撃退できません。
そこで、詐欺などを撃退する電話機を導入すると良いでしょう。
今は、ビックカメラなどの家電量販店で簡単に手に入ります。
https://www.biccamera.com/bc/c/oa/cheatmeasure/index.jsp
https://www.yodobashi.com/ec/news/2000045536/?kind=0002&store=0063
詐欺の業者が電話をかけてくると、「詐欺防止のために録音をします」などの注意喚起のアナウンスが流れます。
そして、電話をとると、通話内容を自動で録音します。
値段はそんなに高くないですし、設定も簡単です。
玄関の録画機能付きのカメラを設置しましょう
玄関の入口に、来訪者をうつせるカメラを設置しましょう。
家に訪問にきて、契約をせまる業者を撃退できます。
詐欺対策用の電話機と同じく、今は家電量販店等で簡単に手に入ります。
値段もお手頃です。
https://www.biccamera.com/bc/c/life/surveillance/index.jsp
賃貸の物件でも、玄関の扉に簡単に取り付けられるカメラもあります。
https://pmall.gpoint.co.jp/g-ranking/ranking.php?themeid=24040
とりつけた上で、さらにハードディスクドライブなどに録画をしておくと、万一のときに犯人が分かりますね。
登記識別情報通知(登記済権利証)や印鑑証明書は別に保管
認知機能に問題をかかえる高齢者が1人で住んでいる家に、不動産の業者が押しかけてくることがあります。
悪徳不動産業者が勝手に不動産の所有権の移転登記をすることを防ぐ必要があります。
重要な書類は別に保管しておきましょう。
- 登記識別情報通知(登記済権利証)
- 印鑑証明書
は見つかりにくいところに保管しておくことが良いでしょう。
できれば、実印はさらに別の場所に保管しておくと良いですね。
悪徳不動産業者は、表面上は丁寧な言葉遣いで、笑顔で優しく接してくるんです。
認知機能の弱い高齢者の場合、相手にまかせっぱなしになることがあります。
そこで、不動産業者は、このような高齢者を騙して、不動産を二束三文の値段で売る売買契約書に強引にサインをさせるんです。
そして、売買契約書や不動産仲介の契約書などの書面を渡さずに、立ち去ってしまいます。
認知機能に問題をかかえる高齢者が相手だと、暴力は用いませんがかなり荒っぽい方法ですね。
その後、高齢者の家族が後で気づいたとしても、不動産業者は売買契約を取り消さないと言ってくるかもしれません。
固定電話の番号をかえてみる
小学校のアルバムが詐欺集団の標的の的に!
他の方から、教えて頂いたことです。
詐欺集団は、今、年齢が30~50歳くらいの人の小学校の卒業アルバムを高額で買いとっているようです。
なぜでしょうか?
小学校のアルバムに記載されている電話番号に片っ端からかけているそうです(警察関係者が話していたことだそうです)。
今、30歳~50歳くらいの世代の親がちょうど詐欺集団の標的にしやすいからです。
そこで、電話番号を子どもが小学生の頃と変えていないというご家庭は、固定電話の番号を変えるといのも、1つの手です。
親しい人には、携帯電話の番号のみ伝えれば大丈夫なわけですから。
親族に所有権の移転登記を事前にしておく
弁護士の活用のしどころ
弁護士が事前にサポートできること
ホームロイヤー制度というものがあります。
住まいの問題、介護サービス、詐欺被害など身の回りのこと、財産管理、任意後見、遺言書作成などを含めた生活全般に関する法律的な問題について、継続的な相談に応じます。
任意後見契約・財産管理契約というものもあります。
家賃の支払や通帳の管理、介護認定の申請、介護サービス契約締結などの事務を行います。
成年後見・補佐・補助の申立てのサポートをいたします。
ご親族のどなたかが後見人などになられる際、弁護士は裁判所に後見の申立てなどのサポートをいたします。
不動産をだまし取られないために、親族などのだれかにあからじめ不動産の所有権の移転登記をしておくことも考えられますね。
契約の書面にサインしてしまった場合
次のページに詳しく書いております。
所有権移転登記禁止の仮処分等に備える
不動産業者によっては、不動産の所有権の移転登記の禁止の仮処分等をまず行ってくる業者があります。その後、不動産の所有権移転登記の請求の訴えを裁判所に申し立ててきます。
不動産業者との間で売買契約書に署名をした場合などは、意識しておくことです。
そこで、所有権移転登記の禁止の仮処分がなされる前に、信頼できる人、例えば身内などに不動産を売却される人もいます。
また、不動産業者が訴訟をする場合に備えて、様々な証拠を予め準備しておくことも考えられます。
売買契約を締結した後はどうなるのか?
悪徳な不動産業者と売買契約を締結した後についてです。
その後、不動産の所有権移転登記の手続をさせられます。
そして、不動産業者に所有権の移転登記がなされて終わりではありません。
不動産業者は、すぐに別の第三者に不動産の所有権の移転登記の手続を行うでしょう。
そのため、不動産を取り戻そうとしても、取り戻すことが難しくなっていくのです。
国民生活センターなどへ相談
国民生活センターへ相談してみましょう。
アドバイスをいただけます。
裁判の際は弁護士会照会を利用して証拠を取得
相手との間で裁判になることがあります。
その際は、国民生活センターや東京都消費生活総合センターへ弁護士会照会を行ってみることが考えられます。
相手が同様の紛争を起こしていないか、似たような手口ではないかなどの情報を取得できます。
次の裁判例が参考になります。
裁判例:高齢者への過量販売と損害賠償請求
他に同様の被害をうけている人たちがいるかもしれません。そ国民生活センターなどへ相談すれば、他の人達の助けになります。同様の被害を受けている人達が、弁護士会照会で証拠を取得できます。
そのためにも、国民生活センターなどへ相談して、被害を伝えましょう。
弁護士にすぐに相談
不動産の売買契約書にサインなどさせられたら、すぐに弁護士に連絡をしましょう。
警察に直に連絡をしてもかまいません。
刑事事件になれば、それにこしたことはありません。
しかし、刑事事件にならない場合もままあります。不動産の売買契約書にサインをした後だと、基本的には民事不介入です。警察の人は「弁護士さんに頼んで下さいね。」というはずです。
弁護士に相談をすれば、今後の対処方法についていろいろと法的アドバイスがなされるはずです。
大まかには、
- 警察との折衝の仕方
- 登記所への不正登記防止申出
- 不動産業者や買主との交渉
などについて、将来をみすえた対処方法のアドバイスがなされるはずです。
最後に
事前準備は、なにも難しいことではありません。
家族や親族が協力すれば、比較的簡単に準備できます。
詐欺にあったときに、あわてて警察や弁護士に相談することがないよう、事前にしっかりと準備することが大切ですね。
高齢者の弱みにつけ込み売買契約書にサインをさせる悪徳業者がおります。サインをした場合の事後的な対処方法について、複数記載しました。参考になさって下さい。
身近に詐欺は潜んでおります。例えば、不利な契約した後に、しばらくしてから契約をまき直すという方法は、よく見られる手口です。と対応方法などについて書きました。
参考になるサイト等
参考になるサイトをご紹介いたします。