不貞をめぐる裁判では、金額だけでなく、自分の言い分がきちんと伝わったかどうかも、解決を受け止めるうえで大切なことがあります。今回は、打ち合わせを重ねて尋問に臨み、その後の話し合いで和解に至った事例をご紹介します。
依頼に至る経緯
ご依頼者の方は、元配偶者から、不貞を理由とする慰謝料を請求されていました。不貞相手とされた女性も、一緒に訴えられていました。
依頼者の方は、自身にも責任の一端があることは認識しつつも、相手方の主張には受け入れがたい点も多くありました。
特に金銭的な賠償条件については容易に妥協せず、納得のいく形で解決したいという強い思いをお持ちでした。ご自身の言い分を伝えたうえで、納得できる形で解決することを望まれていました。
また、一緒に訴えられた女性との関係についても、双方に一定の責任があると考えておられました。その思いも踏まえながら、どの点を主張し、どのような解決を目指すかを整理していきました。
弁護活動
主張を伝えることと、相手への配慮を両立する
一緒に訴えられた女性との関係では、依頼者の方が考える責任を踏まえ、安易に妥協するのではなく、必要な主張を続けました。早く終えることだけを優先せず、何を大切にして解決するのかを確認しながら進めました。
次に、元配偶者との関係では、元配偶者の気持ちを必要以上に損なうことなく、依頼者の方の主張をしっかり伝えるよう心がけました。
不貞をめぐる紛争では、当事者の感情に深く関わる事情を扱います。それでも、言い分を伝えるために、相手の人格を責める必要があるとは限りません。争いとなっている事実と、判断に必要な点に焦点を当てて尋問を行いました。
打ち合わせを重ね、尋問に備える
裁判では、主張を書面にまとめるだけでなく、尋問で本人が話す場面もあります。
そこで、依頼者の方と予行練習を何度か行い、出来事の経緯や、裁判所に伝えたい点を一つずつ確認しました。
尋問の準備は、単に答え方を覚えるためのものではありません。自分が経験したことと、そのときの受け止め方を整理し、質問に対して落ち着いて説明できるようにすることを大切にしました。
想定される質問や、金銭面・事実関係に関する主張の整合性を一つひとつ確認しました。本番で落ち着いて自身の思いと事実を伝えられるよう準備を重ねました。
訴訟で対立しているとはいえ、かつて配偶者であった元妻をいたずらに攻撃したり傷つけたりすることは、解決をかえって遠ざけます。そのため、尋問では相手を感情的に刺激・侮辱するような問い詰め方は避けつつも、主張すべき事実と立場を法的・論理的にしっかりと伝えるスタンスを貫きました。

裁判や尋問と聞くと最初はとても不安でした。
しかし、水谷先生と何度もお会いして打ち合わせができたことで、自分の言い分をどう伝えればよいかが整理できました。感情的にならずに自分の考えを伝えられたと思います。
解決
尋問において、依頼者の方が誠実に、かつ感情論に流されずに事実と主張を述べたこと、そして元妻を不必要に攻撃しなかった姿勢が功を奏したと思います。
相手方の女性(元妻)も尋問後、「きちんとした謝罪の気持ちが示されるのであれば、あとは和解で終わりにしたい」と話され、裁判所が提示した和解金額を受け入れる姿勢を示しました。
最終的には、裁判所が提示した金額を双方が受け入れる形で、和解が成立しました。
打ち合わせを重ね、自身の言い分を尋問でも伝えた過程があったことで、依頼者の方も、納得して終えることができたものと受け止めています。
裁判の解決を考える際には、金額のほかにも、「伝えておきたいこと」「自分が引き受けるべきだと考える責任」「これからの生活のために区切りをつけたいこと」があります。それらを整理しておくことは、和解案を受け入れるかどうかを考える際の手がかりになります。

裁判で尋問まで進むと、「どちらが勝つか負けるか」という不毛な対立に陥りがちです。
しかし、大切なのは「相手を必要以上に傷つけず、自分の主張と筋をしっかり通すこと」です。誠実な姿勢で臨めば、尋問を経た後であっても、お互いが納得できる和解の道が開けることがあります。お困りの際は、諦めずに納得のいく着地点を模索していきましょう。
※プライバシー保護のため、個人の特定につながる情報や和解条件の詳細は掲載していません。
