共有物分割訴訟

事案
相続により、3人の子ども達が不動産を相続しました。
遺産分割の協議を行っていません。
不動産を共有する登記は行いました。
数年後、相続人の1人が死亡し、その子ども(被相続人からすると孫)が相続しました。

共有物分割訴訟と遺産分割の協議・調停のどちらを行うべきか?

まず、遺産分割の調停はいつでもでき、 消滅時効にかかりません。
また、共有物分割訴訟もいつでもでき、消滅時効にかかりません。
そのため、いつでも行えます。

基本は遺産分割によるべき

共同相続人間では、共有物分割ではなく遺産分割によるべきです。
(最三昭62年9月4日、判タ651号61頁参照)

判例でも、次のように判示しております。

 遺産相続により相続人の共有となつた財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないどき、又は協議をすることができないどきは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によつてこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である。

引用元:最高裁判所第3小法廷 昭和59年(オ)第569号 共有物分割請求事件 昭和62年9月4日

遺産分割の合意や調停をせずに共有物分割訴訟を提起できる場合がある

一定の場合には、遺産分割をすることなく、共有物分割の訴えの裁判をすることができます。
最高裁判所第2小法廷の平成25年11月29日の判決について、判例タイムズでは次のように解説しています。

 遺産分割は,被相続人の遺産全体を包括的に把握してその分割をする手続であり,特別受益や寄与分を考慮して法定相続分とは異なる具体的相続分によって分割が行われる場合があることからすると,特定の共有物について,遺産共有持分と通常の共有持分との併存が生じている場合には,まず遺産分割により遺産共有関係の解消をしてから共有物分割を行う方が問題が少なく,実際にもそのような手順が踏まれるのが通常であると思われるが,遺産分割の前提問題に争いがあり,訴訟手続において前提問題が解決されることなしには遺産分割を進めることができないような場合には,遺産分割未了のまま,共有物分割の訴えが提起されることがないわけではない。本件も,そのような事例の一つである。

引用元:判例タイムズ1396号150頁参照

共有物分割訴訟の流れ

共有者間で事前にまず協議をする

共有物分割の訴えを裁判所に提起する前に、まず、共有者間で共有物の分割について話し合わなくてはなりません。
民法でも、次のように規定されています。

弁護士の活用のしどころ

当事者同士の感情的な対立で、話し合いがままならないことがあります。
また、不動産という大きな財産に関することです。
そこで、弁護士を代理人として話し合うことで、解決へと導くことができます。

(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

引用元:e-GOV法令検索(民法)

そのため、もし事前の話し合いをしていなければ、裁判で、被告から協議をしていないと主張されるおそれがあります。

流れについて

準備

訴訟の準備をします。

・不動産の登記簿謄本
・固定資産評価証明書
を取得します。

裁判所に訴訟提起

裁判所に訴訟提起をします。

なお、訴訟の当事者ですが、全ての共有者です。
被告については、原告以外の他の全ての共有者を被告としなくてはなりません。
対立していない共有者も、原告の1人とならない以上は被告の1人として訴訟提起をしなくてはなりません。
そこで、いきなり訴状が届いてびっくりしないように、対立していない共有者には事前に訴訟提起をする旨の連絡をいれておくと良いでしょう。

訴訟物の価額

【建物の場合】
固定資産評価証明書の価格×1/3

【土地の場合】
固定資産評価証明書の価格×1/2×1/3

です。
不動産が共有状態の場合、共有持分の割合となります。

共有権を持っている人全てが裁判に参加しなくてはらない
共有物分割訴訟は、専門用語ですが、固有必要的共同訴訟という訴訟の類型です。
すなわち、共有権を有している人は、原告または被告のいずれかとならなくてはなりません。共有持分を有している人が全て共有物分割訴訟の当事者とならなくてはならないのです。

相続が発生している場合、相続人が他にいないか調査が必要となる
例えば、登記簿上はAさんが共有者ですが、死亡して、相続が発生しました。相続人は、Bさんと聞いています。そこで、Bさんを相手に共有物分割訴訟を提起しました。
この場合、裁判所から、Bさん以外にも相続人がいないか調査するよう指示されます。共有物分割訴訟は、固有必要的共同訴訟です。そこで、全ての相続人は、全て共有物分割訴訟の原告または被告のいずれかの当事者とならなくてはならないのです。
そこで、被相続人の出生までさかのぼり戸籍をとりよせ、相続人が他にいないかの調査をする必要があるのです。

裁判の期日において

どのように進めるか、裁判官や当事者同士で話し合います。

強制競売をする前に、任意売却を進めることができます。
任意売却の場合は、裁判官は関与せず、当事者同士で進めることになります。
裁判官は、3か月後ぐらいに期日を開きますか?と聞いてきたりします。
一方、当事者同士のやり取りが不安だったりする場合は、1か月に1回ぐらい期日を入れるよう求めることもできます。

任意売却については、下の項目で説明をいたします。

借地権の場合

借地権の場合は、建物自体を対象として共有物分割の訴えを裁判所に提起できます。
建物が老朽化して建物自体に価値がない場合でもです。
借地権は、建物の従たる権利で、建物の処分に従います。
民法87条2項が類推適用されます。

(主物及び従物)民法第八十七条 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
 従物は、主物の処分に従う。

引用元:e-GOV法令検索(民法)

任意売却の流れ

不動産業者へ依頼する

各当事者が、それぞれ不動産業者に査定などの依頼をします。

弁護士の活用のしどころ

弁護士が代理人の場合は、弁護士が不動産業者へ査定などの依頼をします。
弁護士が普段の付き合い等を通じて、より良い条件で売却してくる不動産業者さんに依頼してくれます。

不動産業者との関係
共有物分割訴訟は、当事者は原告と被告と複数おります。
そこで、複数社と契約できる一般媒介契約で進めることが想定されます。また、媒介価格(販売価格)については、他の不動産会社や売主(原告・被告)の意向の上決定するという内容で進めることが想定されます。

まこと法律事務所

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