遺言能力について
遺言の公正証書遺言を弁護士に依頼する場合
弁護士は、相談者の方から事情をお聞きします。
特に問題となる点ですが、遺言者に遺言能力があるかどうかについてです。
遺言者本人が弁護士に依頼をする場合は、自分で依頼をするぐらいですから、遺言能力は問題とはならないでしょう。
一方、遺言者本人ではなく、遺言により財産を譲り受ける受益相続人や受遺者が弁護士に依頼をする場合についてです。
この場合ですが、弁護士が公正証書遺言の立会証人となる場合は、弁護士は積極的に遺言者と面談をして、状況の確認をする必要があります。
弁護士へは、
・遺言者の健康状態が分かる資料(例えば診断書など)
・生活状況を記載した書面
・認知能力が分かる書面
などを事前渡すと、弁護士も対応しやすいです。
なお、弁護士がご本人との面談するなどして遺言能力が明らかにないと分かれば、遺言公正証書は作成できません。
遺言公正証書の作成は、公証人がご本人に読み聞かせる必要があるからです。
遺言能力の判断要素
裁判で、遺言能力が争われた場合の判断要素についてです。
下級審の裁判例ですが、次のような基準で判断をしております。
遺言能力の有無は、遺言の内容、遺言者の年齢、病状を含む心身の状況及び健康状態とその推移、発病時と遺言時との時間的関係、遺言時と死亡時との時間的間隔、遺言時とその前後の言動及び精神状態、日頃の遺言についての意向、遺言者と受遺者との関係、前の遺言の有無、前の遺言を変更する動機、事情の有無等、遺言者の状況を総合的にみて、遺言の時点で遺言事項(遺言の内容)を判断する能力があったか否かによって判定すべきである。
東京地判平成16年7月7日
医師の診断が必ずしも重要視されるわけではありません。
遺言書の内容や、背後の事情や、結論の良さなども重視されます。
日頃の遺言についての意向も、かなり重視されます。
不倫の相手に対する遺贈
不倫の相手に対する遺贈は、公序良俗違反として無効となる場合があります。
判断の要素としては、
・妻との婚姻関係の実態がどのくらい失われているか
・内縁関係がどの程度継続した後の遺言か
・遺贈が不倫関係の維持や継続を目的としているか
・遺贈の内容が他の相続人たちの生活をどのくらい脅かすか
などを総合的に判断することになります。