配偶者と別居後、病気や生活費が足りないなどの場合に、婚姻費用の保全の申立てを行うことができます。
管轄について
婚姻費用の保全の申立てですが、本案である婚姻費用の申立てが係属している裁判所です。
(審判前の保全処分)
引用元:e-GOV法令検索(家事事件手続法)
家事事件手続法第百五条 本案の家事審判事件(家事審判事件に係る事項について家事調停の申立てがあった場合にあっては、その家事調停事件)が係属する家庭裁判所は、この法律の定めるところにより、仮差押え、仮処分、財産の管理者の選任その他の必要な保全処分を命ずる審判をすることができる。
2 本案の家事審判事件が高等裁判所に係属する場合には、その高等裁判所が、前項の審判に代わる裁判をする。
婚姻費用の調停の場合は、相手の住所地の家庭裁判所が管轄となります。
(管轄等)
引用元:e-GOV法令検索(家事事件手続法)
家事事件手続法第二百四十五条
家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。
婚姻費用の審判の場合は、夫か妻の住所地の家庭裁判所が管轄となります。
(管轄)
引用元:e-GOV法令検索(家事事件手続法)
家事事件手続法第百五十条
次の各号に掲げる審判事件は、当該各号に定める地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
三 婚姻費用の分担に関する処分の審判事件(別表第二の二の項の事項についての審判事件をいう。) 夫又は妻の住所地
申立てについて
申立書を作成して、裁判所に提出します。
申立書には、申立ての趣旨や保全処分を求める事由を明らかにする必要があります。
(審判前の保全処分の申立て等)
引用元:e-GOV法令検索(家事事件手続法)
家事事件手続法第百六条
1 審判前の保全処分(前条第一項の審判及び同条第二項の審判に代わる裁判をいう。以下同じ。)の申立ては、その趣旨及び保全処分を求める事由を明らかにしてしなければならない。
2 審判前の保全処分の申立人は、保全処分を求める事由を疎明しなければならない。
保全処分を求める事由は、疎明が必要です。
「疎明」ですが、次のような意味です。
証明は合理的な疑いを差し挟まない程度に真実らしいと裁判官に確信を抱かせること。またこの状態に達するべく証拠を提出する当事者の行為。疎明はこれより低く、一応確からしいとの推測を裁判官が得た状態、またそれに達するよう証拠を提出する当事者の行為
引用元:コトバンク(証明と疎明)
流れについて
裁判所に申立てをします。
求める金額(相手が有責配偶者の場合)
基本は、婚姻費用の算定表に基づいた金額となります。
ただし、相手が有責配偶者の場合は、もっと高い金額を請求してもよいです。
例えば、 婚姻費用の算定表の金額の他に、借家に住んでいるのならばその住居費分などを上乗せした金額も可能です。
審理ですが、けっこう短期間のペースで進んでいきます。
家庭裁判所の審判廷で行われます。
裁判官、申立人、相手方が出席します。
だいたい、1回の期日は1時間ぐらいでしょうか。
3者交えて話し合うこともあれば、交互に部屋に入って裁判官と話し合うこともあります。
同時に婚姻費用の調停が申し立てられていても、婚姻費用の調停の前に審理が開かれることもあります。 婚姻費用の調停の前に2回ぐらい審理が開かれることもあります。
調停と同じ日に審理されることもあります。
この場合は、調停委員のいる部屋で調停委員と話し、さらに審判廷で裁判官と話すという慌ただしさになります。
婚姻費用の保全の申立てと婚姻費用の調停の申し立ては、別事件です。そのため、婚姻費用の申立てで提出した書類は、調停委員には渡っておりません。
裁判官は、必要があると認める時は、事実の調査や証拠調べができます。
(審判前の保全処分の申立て等)
引用元:e-GOV法令検索(家事事件手続法)
家事事件手続法第百六条
3 家庭裁判所(前条第二項の場合にあっては、高等裁判所)は、審判前の保全処分の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、職権で、事実の調査及び証拠調べをすることができる。
申立人
申立人としては、保全が認められるよう、主張立証します。
収入に関する書類や、現在生活が切迫している状況ことや、病気ならば診断書等を提出するなどしていきます。
相手方
相手方は、保全の必要性がないことや、収入に関する書類などを提出します。
申立人の主張に対して、反論をしていきます。
お互いが主張立証して、裁判官が判断を下せる段階まできたら、裁判官が考えを示します。
婚姻費用として、今月から〇〇円支払うのが相当ですねと述べたりします。
そこで、申立人と相手方が、お互いに金額面などで納得すれば、終了となります(申立人は保全の申立てを取り下げた上で合意)。