長年別居している妻が、マンションのオートロックを勝手に入ってきて、どういうわけか玄関の鍵を開けて、部屋に入ってきました。そして、部屋の中にあった私の手紙なり書類を持っていきました。
その後、離婚の裁判で、その手紙や書類を証拠として提出してきました。
こんなことが許されるのでしょうか?
それはひどいですね。
裁判などでどうなるか、考えてみましょう。
裁判(民事)の証拠になるかについて
証拠として提出された場合
裁判で証拠として提出されると、裁判官が証拠として採用した上で取調べが行われます。
ただし、証明するべき事実との関係で、取調べの必要性がないと判断されれば、取り調べる必要はありません。
次の条文に規定されています。
(証拠の申出)
引用元:e-GOV法令検索(民事訴訟法)
民事訴訟法第百八十条 証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない。
2 証拠の申出は、期日前においてもすることができる。
民事訴訟法第百八十一条 裁判所は、当事者が申し出た証拠で必要でないと認めるものは、取り調べることを要しない。
引用元:e-GOV法令検索(民事訴訟法)
2 証拠調べについて不定期間の障害があるときは、裁判所は、証拠調べをしないことができる。
実際は、証拠として提出された書面は、ほぼ証拠取調べが行われます。
証拠(書証)の申出の撤回
書証は、証拠調べが行われるまではいつでも撤回できます。
しかし、証拠調べ開始後は、相手当事者の同意がなければ、撤回できません。
証拠は、双方に有利にも不利にも事実認定されるので、相手当事者の同意が必要です。
次に、証拠調べが終了した後についてです。
裁判官が証拠について心証を形成している以上撤回はできないのですが、実際は書証の撤回を認める裁判官もおります。
そこで、相手に撤回を促して、提出された証拠の撤回をさせるという方法が考えられます。
違法収集証拠として証拠能力がないと主張する
相手が提出した証拠が違法であると考え、裁判の事実認定の証拠としたくない場合は、裁判で主張立証していくことになります。
大学のハラスメント防止委員会で録音された録音テープの証拠能力について、違法収集証拠であり、証拠能力がないとした裁判例があります。
次のように判示しています。
原告は,平成21年7月7日に行われた委員会において,委員が,①原告の家庭環境に問題がある,②原告が女性に対して偏見がある,③原告が加害者を陥れようとして,訴えを起こしているのではないか,④原告のほうがパワー・ハラスメントだ,⑤原告は揚げ足を取っている。社会的に未熟で成熟していないといった発言を行った旨主張し,これを裏付ける証拠として録音テープ(甲9)(以下「本件テープ」という。)を提出する。
引用元:横浜地方裁判所判決/平成26年(ワ)第57号
〔中略〕
以上のとおりであるから,本件テープについて民事訴訟において証拠とすることを認めることは,訴訟法上の信義則に反するというべきであり,本件テープについては,証拠能力を認めることはできず証拠から排除することとする。
刑事事件として
警察に被害届をだすことも考えられます。
なお、被害届が受理されて相手が刑事処分をうけることも考えられます。そこで、相手が刑事処分をうけても良いのか、相手の家族などにも影響しかねないことにも思いをはせるべきです。
よく考え、行動した方が良いです。