婚姻費用の基本的な内容や様々な論点について

婚姻費用

婚姻費用とは、固く言うと、婚姻から生じる費用で、夫婦そして家族が通常の社会生活を送る上で必要な生活費のことです。

例えば、

  • 婚姻(結婚)生活をおくる上で必要な衣食住の費用
  • 出産費
  • 交際費
  • 医療費
  • 未成熟子の養育費
  • 教育費
  • 交際費

などです。
要するに、生活費のことですね。

沿革


国の最高法規である憲法は、24条で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と規定しています。

すなわち、夫婦は対等の立場で婚姻生活を築いていくことが定められています。

一方、戦前の民法は、家制度に基づいていました。すなわち、夫が妻の財産を使用したり収益することができました。
その後、戦後の日本国憲法制定にあわせて、今の民法は、夫婦は夫婦の一方が婚姻前からもっていた財産と婚姻中に自己名義で取得した財産は,その者の個人財産としました(夫婦別産制)。また、夫婦は資産・収入などの事情を考慮して、婚姻費用を分担して婚姻生活をおくっていくことを定めました。

根拠

結婚した夫婦は、お互いを扶助する義務(民法752条)、婚姻費用の分担義務(民法760条)を負います。

そこで、この条文を根拠として、配偶者に対して養育費(生活費)を請求できます。

婚姻費用が問題となる場面

夫婦が同居して、普通に協力しあって生活していくうちは、婚姻費用(生活費)の問題が生じることは少ないですね。

婚姻費用が問題となるのは、夫婦が仲が悪くなるなどして別居をしたときに主に問題
となります。
別居をすると、収入が減るなどして生活が苦しくなります。
そこで、お金がある方に対して、婚姻費用を請求するのです。

婚姻費用が主に問題となるのは、夫婦が別居を開始した後に問題となります。

婚姻費用の調停の申立て

婚姻費用の申立てですが、裁判所のホームページによると、「相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所」に申し立てることになります。

例えば、婚姻費用の申立をする妻が東京に住んでいて、夫が大阪に住んでいる場合、基本は大阪の家庭裁判所に訴えることになります。

裁判所におさめる費用ですが、

  • 収入印紙(1200円)
  • 郵券(=切手)(1000円ぐらい)

です。

その他、必要な書類の書き方については、裁判所のホームページをみると分かります。

事前準備の際に意識したいこと

勤務している人は、婚姻費用を計算するために、源泉徴収票が求められることが多いです。

そこで、勤務先に源泉徴収票の発行を依頼する場合に、勤務先から、「何に使うの?」といろいろ聞かれるかもしれません。

転職した先で使うために必要なのだろうとか、勘違いされるかもしれません。

そこで、事前になんと答えるか考えておくことも必要でしょう。

例えば、融資を受けるために準備中などが考えられます。

Q 婚姻費用の分担の調停だけを行うことの有効性

1 事案(具体例)

事案

夫と離婚をしたくて、妻が離婚の調停の申立てをしました。そして、離婚調停において、一緒に婚姻費用の支払いも求めました。しかし、調停では、夫は離婚には応じないと強く述べています。そのため、離婚の成立まで長くかかることが見込まれます。
一方、妻は、夫から婚姻費用の支払をストップさせられてしまいました。法的に婚姻関係が継続している場合、婚姻費用を支払わなくてはなりません。そこで、妻は、離婚調停とは別に、婚姻費用分担調停を申し立てることを考えています。
ただ、妻は、婚姻費用分担調停の申立てをすることにより、夫の気分を害しないか、離婚の調停に悪影響を与えないかを心配しています。

2 婚姻費用分担調停をするべき

たしかに、婚姻費用分担調停の申立てをすることで、離婚調停での夫の感情を害するなどしないかを心配する妻の気持ちは理解できます。

しかし、婚姻費用が未払いのまま、生活に不安をかかえたままで、離婚の話し合いをするべきではありません。
この場合、しっかりと夫から婚姻費用の支払うけた上で、お互いが対等な立場で話し合える状況を作ることがなによりも大切です。そうすることで、離婚調停でも、相手としっかり話し合えるし、闘えるのです。

離婚の調停の中で婚姻費用の請求ができる?

基本は、婚姻費用の分担の調停をすることになります。

一方、婚姻費用の一部不払いの場合は、離婚の財産分与の中で考慮することもできます。
例えば、夫婦が別居後、夫が妻に婚姻費用を毎月支払っていたけど、次第に支払われなくなりました。そこで、妻が夫に対して離婚の調停を申し立てました。この離婚の調停の中で、婚姻費用の一部不払いについて財産分与の中で話し合われることがあります。

婚姻費用の調停ではどのように婚姻費用が決められるか?

基準

婚姻費用(生活費)の定め方は、次のように法律で規定されています。


夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

民法760条

そして、この条文をうけて、調停の場では、裁判所が作成した算定表(婚姻費用算定表)に基づいて、婚姻費用が定められています。

あてはめ

以上からすると、婚姻費用は、裁判所が作成した算定表(婚姻費用算定表) で定めていきます。
ただ、絶対ではなく、法律の条文に書いているように、「 その資産、収入その他一切の事情を考慮して 」具体的な事情を考慮して定められています。

出産費用は婚姻費用に含まれるのか?

事案

妻が出産に際して、病院の入院代で30万円ほどすべて負担をしました。
そこで、婚姻費用の調停と離婚の調停が同時に行われている場で、出産費用の負担を夫に要求しました。

この場合は、考え方によると思います。

離婚に際しての財産分与で、出産費用の一部負担を夫側に求めることは可能でしょう。

婚姻費用として考えることもできるでしょう。
婚姻費用として考える場合は、出産費用を一括で支払うことをもとめたり、毎月の婚姻費用の支払いに上乗せして請求することも考えられるでしょう。

別居後に入院をした場合

別居後に入院をした場合、婚姻費用はどうなるでしょうか。

入院した病気の状態や回復の見込みなどにより、状況が異なります。

入院をしても、退院をして職場に復帰する場合、復職したときの給与を基準に婚姻費用が決められるでしょう。

婚姻費用の調停を行っている際に、夫が入院したとします。調停委員は、夫の入院状況や回復具合を見定めて、婚姻費用を決めるでしょう。そこで、調停が長引くかもしれません。

なお、入院期間中は働いて収入をえることができないことが通常です。
そこで、入院期間中は婚姻費用の減額も考えられます。すでに支払う婚姻費用が決まっている場合には、夫婦間で話し合って、入院期間中は減額することも考えられます。

一方、入院が長期間にわたり、退院後も後遺症などにより収入が減ることが見込まれる場合があります。
この場合は、収入が減った金額を想定して、婚姻費用を決めることになるでしょう。

Q 夫婦関係が破綻している場合に、婚姻費用の分担義務はあるのだろうか?

1 問題となる場面

夫婦は、相互に婚姻費用を分担する義務があります。そして、夫婦が同居をして、けんかをしながらも夫婦関係を築き上げて生活しているいるうちは婚姻費用の分担の問題は通常は生じません。

一方、夫婦関係が破綻をしている場合には、もはや夫婦とはいえず、婚姻費用を負担する必要はなくなるのでしょうか。
このように、婚姻費用の分担が問題となるのは、夫婦関係が破綻に瀕したときで、とりわけ別居により他方の配偶者の生活が苦しくなったときに問題となります。

2 事案(具体例)

事案

結婚して2人で飲食店を開店して切り盛りをし、お店は順調に営業がなされていました。しかし、夫は生活に余裕ができたからか、キャバクラなどに頻繁に通うようになりました。そして、夫は不倫の末、他の女性との間に子供ができました。
そのため、妻は夫と大げんかの末、家をでていき、お店の共同経営からも手を引きました。その後、次第に妻は生活が困窮していきました。


3 別居後は婚姻費用の分担の義務はなくならないのか?

なくならないです。

役所に婚姻届出をして法的な婚姻関係になった場合、法的に離婚が成立するまで法律上婚姻費用の分担義務を負います。
そして、この義務は別居していようがしていまいが関係ありません。
夫婦関係が完全に破綻をしていても、関係ありません。

妻が不倫した場合に夫に婚姻費用の請求はできる?

妻が不倫して家を出て行った場合に、収入のある夫に婚姻費用の請求はできるでしょうか。調停や裁判になった場合について考えてみます。

夫はなにも悪くないのに、妻が他の男の人と交際したくて不倫した場合、婚姻費用の請求は認められないでしょう。妻が100%悪いですからね。

一方、夫の暴力などが原因で妻が不倫した場合、婚姻費用の請求が認められる余地はあります。夫にも原因があるからです。

婚姻費用を決めるための基準

基準となる計算式がある

婚姻費用としていくら相手に支払うべきかについては、裁判所が作成した算定表が広く用いられています。

夫婦のお互いの収入や、子供の人数などにもとづいて、決定されます。

ただ、この算定表は、分かりやすい一方、様々な個別の事情まで触れられていません。
そのため、算定表を一応の目安とした上で、修正する要素はないかしっかり考えましょう。

婚姻費用は裁判所の算定表により一律に決定されるわけではない

婚姻費用は算定表を基準にするとはいっても、夫婦の話し合いでまず決められます。
そこで、夫婦が婚姻費用はこの金額でOKですとなれば、もちろん算定表によらなくても良いことになります。

例えば、裁判所の算定表で、夫が妻に毎月支払う婚姻費用(生活費)は5万円とでたとしましょう。

しかし、夫が体調が悪くて収入が悪化しており、毎月5万円払えないとします。
この場合、夫婦の話し合いで、最初は毎月3万円ずつにして、半年後に6万円ずつ支払うという約束もできます。

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